伝統構法の継手や仕口はパズルと違う
昨日の新聞記事に、日本の伝統構法の技法を使ってドイツに木造建築を建てる記事が載っていました。日本の木造建築が海外で紹介されたり、造られたりするのはうれしいことですが、新聞記事の書き方が少し気になってしまいました。その記事の中で、「くぎやボルトを使わずにパズルのような継ぎ方で木材を組む伝統工法」と書かれていました。くぎやボルトを使わないというのは良いのですが、パズルのような継ぎ方という表現が納得いきません。パズルは精密につくることは間違いありませんが、遊ぶ人に楽しんでもらうために、難しく造ったりします。それに引き換え、職人が造る継手や仕口は、無理に複雑に造ったりすることはありません。力を確実に伝えながらも、できるだけ無駄な仕事はしない。そんな中でシンプルで、かつ、美しく、力を確実に伝達できるような形に集約されていったのです。住宅建築というのは芸術ではありません。いつでもかかる費用との戦いでもあります。必要な性能を保ちつつ、もっとも有効な形を見出していくところが職人の技なのです。私も木のおもちゃやパズル、小物などを作っていますが、価格と中身の戦いの中から形が生まれてくるのを実感しています。もちろん木のおもちゃや小物の中にもデザイン性を上げることにより、販売価格を高くして採算を取っているケースもよくありますが、そういったものはどんどん庶民の生活からかけ離れていきます。この記事を書いた記者の方にはそんな意識はないのでしょうけれど、やはり伝統工法は一般庶民からかけ離れた存在だと意識されているのではないでしょうか。伝統工法の技が庶民の生活から離れ、芸術や文化財の世界でしか残っていかないとしたら大きな問題です。もう一度、職人の技が誰のために、何のためにあるのかを考え直す必要があるのではないでしょうか。人気blogランキング参加中。クリックお願いします!↑ の部分をポチッと押していただくだけでOKです。