徒弟制度

三和総合設計

2004年09月13日 18:09

もう何年も前のことになりますが、滋賀県の北部の安曇川町の宮大工さんのもとに毎週土曜日の夜に通わせていただいたことがあります。伝統的な技術のほんのさわりのさわりを経験させていただいた程度ですが、作業の後のお話に非常に興味深いものがありました。
それは、徒弟制度の話です。棟梁いわく、日本から徒弟制度が消えたことにより職人の質はまったくだめになったと言われました。最近の若い者に給料を払うからだめなんだと。こんな話を一般的な会社で聞くと労働争議が起こりそうな話ですね。どういうことかというと、新入社員を雇う、給料を支払わなければならない。そう考えるとその新入社員でもできる仕事を見つけてくる。そうするとその会社は誰でも可能な仕事をいかに早く安く仕上げるだけに一生懸命になる。結局、会社全体のレベルが下がってくるということです。
昔は丁稚修行の若者に一日中掃除をさせていた。そういうことにより、仕事の大切さを間接的に経験する。一日中、何を削る訳でもなく鑿を研ぎ続ける。そうすることで一人前の技術がえられる。あれもこれも丁稚にに給与を払わないからさせてやれることなのです。職人になれないうちに、金儲けに走らせることが本当に良いのかという問いかけです。
世の中の住宅も技術がなくても建設可能な方向に進んでいます。しかし、これは住まい手のためではなく、そこにかかわる企業が利益を得るためなのです。もちろん住まい手にまったくメリットがないわけではなく、目先のコスト安や早く住まいが完成することができるなどがありますが、本当に重要なことなのでしょうか。日本全体がそんな風に走って、私達が持っていた世界に誇れる技術をどんどん失っているのではないでしょうか。
私達の事務所では、給与を支払わない徒弟制度という訳にはいきませんが、どんな仕事も納得できるまで仕事をしようという方向で進めています。いつの間にか仕事の終わりの時間はみんながいやになるときになってしまっています。毎日遅くまで一生懸命仕事をしていますが、その代わりにいつでも平日であろうと仕事が忙しいときであろうと講習会や見学会、見るべき建物があるとき、確かめてみたいものがあるとき、納得するまで行動することができるようにしています。丁稚が技術を上げるために納得するまで鑿を研ぐようなものでしょうか。おかげさまで、自分たちで言うのもなんですが、事務所のレベルはどんどん上がっているように思います。
ただ、経営者の私はいつ労働基準局からお咎めをいただくか。
お代官さま、おゆるしくだされー。