バリアフリー住宅について
高齢者住宅ということで、一番に思い浮かぶ言葉といえば、「バリアフリー住宅」ではないでしょうか。今や子供も知っているこの言葉ですが、どういう住宅のことをいうのでしょうか。子供に聞くと、「段差のないこと。」とか「トイレや風呂に手摺がついてること。」と言います。大人たちも同じです。本当にそれだけなのでしょうか。
確かにお年寄りにとって、床のわずかな段差が障害になることもあります。トイレに手摺がついていると立ち上がりが楽になります。浴室にも手摺があるとすべってころぶこともなくなるかもしれません。お年寄りが利用することを考えると、こういった配慮は重要になってきます。しかし最近は、バリアフリー住宅の考え方が違った方向へとらえられているような感じがします。段差には、楽しさがあったり、水漏れを防ぐなどのように機能性があったりします。でもこの頃は、何がなんでも床の段差をなくすことが進められたりしています。若い夫婦が、「幼い子供がけがをしないようにバリアフリーにしてください。」と言うのを聞いて誰も不思議に思わなくなっているのは変ではないでしょうか。使わなくなった筋肉は衰えていきます。段差のない家で育った子供が、外で遊んでいて少しの段差に反応できるのでしょうか。ころび方を知らない子供もいます。
またこんな話も聞いたことがあります。元気なお年寄りが、自分の家は段差のない安全な家にした。これで安心して老後が暮らせると言って自慢していたそうです。
その方が大好きな旅行に出掛けて、温泉でちょっとした段差に気がつかず、大怪我をしたそうです。公共の建物は誰が利用するかわからないので、バリアフリーに配慮することは当然のことなのですが、住まいは住まい手が必要になったときに、それに見合った改造をすることが一番良いことだと思います。手摺が必要になった時、下地に補強をすることができなければ取り付けることもできませんし、先に手摺を付けていても、手摺側の手がマヒしてしまったら無用の長物です。車いすで生活できるように改造しようとしても、壁や柱がとれなかったり、間取りに無理があれば、スペースの確保もできません。大事なことは、対応したいときに、住まいが増改築できる構造かどうか、変更が可能な間取りかが重要になってきます。構造耐力上改造がしにくいプレハブ住宅や2×4住宅などは、最初から無駄であっても手摺を付けておかなければならなかったり、最初から段差をなくしておかなければならないのです。しかし、それをあたかも高齢者に配慮した良い住まいであるかのように宣伝し、売り物にされています。住まい手のことよりも商業活動つまり、売れるか売れないかの判断が先行しているように思えます。宣伝や広告に惑わされて目先のことだけにとらわれず、もっと心をフリーにして長い目で住まいを見つめる必要があります。私たちの考えるバリアフリー住宅は、住まい手の状況を現在から将来にかけて、長いスパンで考えた住宅です。状況に応じた計画、将来改造ができる構造であり、改造可能なプランであるかどうかを考えることです。