床柱のゆくえ
最近、住まいに床柱が使われなくなりましたね。
もちろん、まだまだ床の間というものに価値を感じる人もおられますが、ひところから比べるとかなり減ってきました。
床柱には、北山杉の人造絞り丸太と決まったように使われていましたが、利用が減って京都北山の産地は大変なようです。
そもそも、床柱に絞り丸太を使うのは、茶室などから始まりました。できるだけ美しい木材を使って住まいを建てたいという時代に、あえてわびさびの発想から山に生えている絞りが入った丸太を使うことにより、ひなびた感じを出そうというものです。
しかしながら、茶室というものはどこにでもありそうな材料でありながら、その空間に適した材料を厳選するというものですから、本当はどこにでもある絞りの入った丸太ではいけないのです。天然の良い絞りの入った丸太を探してきて、上品な雰囲気作りに勤めたのです。
そういう原点とは別に、床の間には搾り丸太。天然は高いから人造で。
そういった床の間づくりがブームになりました。床の間のついている家を手に入れるとリッチになった気分というのでしょうか。特に床の間の良さを感じていたわけではなく、ブームで造られていた訳ですから、ブームが去ればなくなってしまうということです。
北山杉も森林の本当の意味での活用ということを忘れ、金儲けに走った反動を今受けているのでしょう。
ところで、右の写真は我が家の玄関と階段のあたりの写真です。
玄関の上り框と階段の角の小柱に磨き丸太が使ってあります。
最近では床の間が少なくなったのですが、大工さんが手持ちで床柱ぐらい持っているケースが多いですよね。それもどこかに少し傷がいった物や少し焼けが進んだものなどです。
そういう床柱を切り使いして、小柱や上り框に使いました。
角の張った框や柱より優しい感じがするでしょう。でも、これが人造絞り丸太ならば使い物にはなりません。
やはり、偽者はいつまでたっても偽者です。
木材の良さは、加工性があるということです。切ったり、削ったり、磨いたり、そうすることにより違った用途に変身します。既製品の建材にはありえないことです。
私たち設計者は、大工さんのような経験で生きているわけではなく、経験を大事にしながらも発想というものも大事にしています。
それも、お金をあまり掛けずに味のあるものをと考えています。