天竜に視察に行ってきました

三和総合設計

2006年02月07日 08:34

2月5日、6日と二日間にわたって、静岡県の天竜地方に木材に関する視察に行ってきました。
今回は、滋賀県大津林業事務所の企画で、林業家のグループと大津の森の木で家を建てようプロジェクト!のグループが参加し、視察だけではなく、意見交換などの交流も目的とするものでした。


まず最初に訪問させていただいた場所は、天竜産の木材を使って造られた保育園です。
園長先生にお話を聞かせていただきましたが、特に床に使った杉材が、子どもだけでなく保護者の方々にも好評で、入園希望者が非常に多いそうです。


次に、今回の主要な目的地の榊原商店に出向きました。
榊原商店は合併前の天竜市北部(現在は浜松市)にあり、天竜産の杉材や檜材の丸太が大量にストックされていました。
榊原商店を中心に新月伐採という取り組みが進められています。
オーストリアの言い伝えで、新月のころに切った木は腐ったり、虫がついたりしにくいというものです。書籍になって出版されていますのでお読みになった方もおられるかと思います。
新月伐採が本当に効果があるのかどうかは、今のところ理論的に証明される段階まで至っていないそうですが、さまざまな実験などの結果では、新月のころに切った木材はやはり虫がついたりしにくいという事実が確認されているそうです。
現地では新月伐採に取り組んでおられる方々からいろいろなご説明をいただきましたが、熱心な取り組みに感心させられました。
法律や制度などに頼らず、大きな機関で性能が証明されなくても、住まい手にとって良いことは何でも取り入れていこうとする考え方と、良いものを供給するために関係者が一丸となって取り組む姿勢がすばらしいものだと感じました。


この写真は、伐採した木材にバーコードを取り付け、木材のトレーサビリティを可能にしようとするものです。
兎角、木造の世界はあいまいな考え方が多いものですが、ここでは可能な限り根拠のある製品づくりを考えておられることに感心させられました。
良いものは妥当な値段で買っていただく努力が必要です。
安さを売り物にしていくと、さらに安さを追求させられます。その結果、住まい手の方々にも良い結果は出てきません。安かろう悪かろうという製品が多いことは最近のさまざまな社会問題で明らかにされているところでしょう。

今回の視察の中で天竜の方々とお話をさせていただいて問題としてわかったことがあります。
一点目は、この天竜の取り組みは全国的に見て評価されているところですが、地元の行政では冷ややかな見られ方をされているということです。
いまだに、行政では国などが決めた基準などを中心に判断をし、制度や法律を離れた判断はまったくできないということです。
TSドライというグループは木材を自然乾燥で行なっています。しかし、行政は木材の乾燥は機械乾燥一本やりです。その結果、機械乾燥を行なっている木材関係者には補助金が出るが、自然乾燥に関してはまったくでないということがあるそうです。
木材の良さを活かして住まいを造っていこうとしている人たちの中では、機械乾燥(特に高温乾燥)の問題点が指摘されていますが、お客さんに対してのクレーム対策(強度等は問題がでるが、見た目の割れや狂いがすくない)にしかならないやり方に対しては補助金を出し、木を本当に活かして使おうとし、日本の山のことを考えている方々には補助金が出せないという、ばかげた状態になっているようです。

二点目は住まいにおける工務店の問題です。
このグループの活動は先ほども書いたように全国的に注目されているところですが、地元の工務店との取引はまったくないそうです。
設計者が直接住まい手と一緒に山へ訪れ、木の良さを実感し契約したりしていくそうです。
このTSドライというグループは、木材の販売価格もオープンにし、山が手入れされていくことも念頭においてぎりぎりの価格設定をしてるようですが、工務店はそこへ現れ、木材の二重価格を求めるそうです。
お客さんには木材の販売価格をそのまま提示し、木材の供給者には値引きを要求し、差額で利益を稼ぐという、昔からある業界の悪習慣をまじめなグループに押し付けようとするのです。
もちろん、価格の透明性を実施していこうと考えているこのグループは値引きはむりであるという回答をするわけですが、そういう答えをすると契約が成立することはほとんどないそうです。

もう一度、木造住宅の業界について考えなおしてみましたが、こんな問題がやはりあるのかなと思いました。
すべての工務店ということではありませんが、従来の工務店は住まいづくりにおいて工務店がトップの位置におり、その他の業者は自分達のいいなりになる下請である。
本来、工務店の経費や利益は諸経費という項目で表現するのですが、それが大きな数字になるとお客さんに値引きを要求されるので、下請の価格に費用を転嫁してわかりにくくする。そういうやり方で利益を確保するという方法をとってきました。
そういうことを行なえば行なうほど、以前にも書いたようにオープンシステムなどというようなやり方が起こってくるのです。工務店の管理能力をお客さんに費用の面でも認めていただくような考え方を持たないで、間を取り持って利益を確保しようとするやり方は、長い目で見てお客さんから理解を得ることは難しいでしょう。

下請業者さんを協力業者と呼び、自分達の使い捨てではなく、住まい手のために一緒に努力していく仲間だと考える工務店も出てきました。
ハウスメーカーよりも良い木造の住まいを住まい手のために供給するためには、下請業者さんをはじめ、設計者、木材関係者が真の協力関係が築けることが重要だなと感じた視察旅行でした。



6日午前中に研修はすべて終わりましたので、焼津に昼食を兼ねてショッピングに出かけることになりました。
焼津のインターのすぐ近くで、観光用に作られた感のある施設でしたが、マグロを中心に多くの魚が販売されているのをほんの少しではありますが体験することができました。