手加工

三和総合設計

2006年02月11日 08:16

住まいの工夫といえるかどうかはわかりませんが、今回は手加工のお話をします。

手加工の反対といえば、機械加工。住まいの世界では構造体の工場プレカットということになります。
最近では、手加工がめっきり少なくなり、かなり多くが工場プレカットされるようになっています。一番の原因は大工手間を省くためです。大工手間の価格が少なくとも坪あたりざっと6万円ぐらい違うでしょうか。ですから35坪ぐらいの住まいで、200万円強の価格の違いとなって出てきます。国産の木材を使うことにより住まいの価格が高くつくと思われている方も多いのですが、実は木材の値段はそんなに違いはありません。大工手間を安くするため、プレカットを採用する。これが真相です。
自然素材である日本の木材を加工するときは普通手加工されますが、プレカットをする場合は工業製品に近い集成材を使うことになります。
集成材は強度が高いとか宣伝されていたりしますが、実のところは人件費の削減のためだけで、プレカットに向いた集成材をできるだけ安い外国の木材で作っているだけなのです。
自然素材の無垢の木は、微妙な曲がりやそりがあります。その曲がりやそりは決してマイナスに働くばかりではなく、曲がりやそりの方向をうまく見極め、強い住まいを造る工夫が大工さんにはあるのです。木材の芯に墨を打ち、木の曲がりやそりを見ながら刻んでいく。これが大工技術です。

プレカット一番の問題は、簡単な平面図をもとに、CADのオペレーターが木材の木組みを自動的に決めていく。木の性質を知らない工場の労働者が、どんどん機械に木材を突っ込んでいく。こんなことでまともな住まいができるはずがありません。
木を見ることができない人たちが作る住まいですから、木を見ることができなくても問題が起こらない集成材が使われることになります。接着剤の問題が起こったりしたりしますが、化学物質の健康被害は使う接着剤を改良することにより、少しはましになりました。まだまだ使われている化学物質に間違いないといえるほどの安全性は証明されていませんし、安全な化学物質を選ぶことにより、接着強度は低くなり、長い将来においての強度に不安が残ると思いますが、低下価格を売り物にした住まいでは、集成材の利用やプレカットの採用は、住まいが短命になることをあきらめれば、一定、仕方がないのかもしれません。

しかし、最近問題になるのは、日本の無垢の木材をそのままプレカットする建物が増えてきたことです。
木の住まいがブームになるにつれて、さまざまな業者が「木の住まい」を宣伝に使うようになりました。その中で、いつものように低価格路線の業者が出てきたのです。
「○○産の檜材を使っています。高気密高断熱仕様でこの価格」などのうたい文句です。
低価格を実現しようとすると、上にも書いたように、プレカットで大工手間をカットするやり方が手っ取り早いのです。しかし、無垢の木材を使ってプレカットして、木の良さが活かせるのでしょうか。もちろん、強度の高い伝統継手などは不可能です。
しかしながら、今問題としなければならないのは、自然素材である木材を木を見ず刻むことによるマイナス面が怖いのです。

今まで私たちが造ってきた「木の住まい」は工業化されたプレカットによる木造住宅とは明らかに違うものでした。誰もがその違いについて理解はできるものでした。しかし、最近では、広告のキャッチを見る限りほとんど違いがわからないものが増えてきました。

似て非なるものほど、問題は大きいということを住まい手の方々にわかっていただくにはどうしたら良いのでしょう?