日本の住宅技術が中国に?

三和総合設計

2007年01月25日 08:44

今日の朝のNHK番組で、日本の大工技術を学ぼうとする中国の若者たちの映像が流されていました。

中国では、レンガや石積みの住宅が普通で、中には鉄筋コンクリート造の建物もあるそうですが、木造の住宅はほとんど無いそうです。
そこに、日本の木造の大工技術を持ち込み、温かみがあり、環境にも良い住宅を建てていこうという話がされていました。

日本の優れた技術が海外でも評価されるのは嬉しいことですが、いくつか疑問点を感じたことがありました。
まず、指導者として紹介されていた人物は、日本で大工の技能を2年間ほど勉強したと言われていました。
たった2年ですよ。
2年で大工技術が覚えられるでしょうか。でも、現実的に映像にはその人物が若者たちにのこぎりやのみの使い方を教えていました。

その後に、日本の住宅に使われる用語の学習風景が映し出され、黒板には「管柱」などの文字も書かれていましたが、中国なら読み方は別として、漢字で意味を伝えるのは楽かもしれないなと見ていました。
すると次に、日本語の勉強という映像が映し出され、そのうちに日本語学習として「施工に失敗しました」「申し訳ありません」などの日本語をみんなで唱和しているのです。
だんだん怪しさが見えてきたところで、アナウンサーから日本のハウスメーカーの進出に備えて勉強していますと紹介がありました。

そうです。日本の優秀な技術や技能を持ち込むのではなく、日本と中国のお金儲けのための企業による戦略に過ぎないことが見えてきました。

そもそも、中国には住宅に利用できるほどの木材がないことが木造住宅がつくられていないことの大きな理由です。そこに、また、企業論理を持ち込み、「住まいの商品化」を輸出しようとしているのです。いつもお話させていただいているように、住まいを金儲けの手段に使って欲しくない。
住まいを建てる人も同じように思っているでしょう。
しかし、現実にはそういう選択肢しかなくなりつつあるのが日本の住まいづくりです。日本のゆがめられた住まいづくりを他国まで持ち込んで欲しくはないです。

中国で木造住宅が建設されるようになると、世界の木材需要に変化が出ます。木材不足になると国産材の価値も上がって良いと考える方もおられますし、宮崎県などではすでに中国向けの輸出も計画されていると聞きます。
国産材の利用の必要性は、他国の事情によって左右されるものであってはいけないと思います。
中国で木材が必要となるから日本の国産材も価値が出るということではなく、国産木材を利用することの大きな価値を考え、他国の住宅事情などに左右されること無く自活できる森林利用計画が進められるべきだと思います。