あなたのお家は外断熱?
テレビコマーシャルで、「おい、うちの家は外断熱かよ・・・。そうだよ」というのを皆さん見られたでしょうか。
断熱をどうするか。私たちが設計のなかでいつも悩むことのひとつです。
でも、テレビコマーシャルでは外断熱が優れていて、その他の断熱工法は劣っているような表現がされていたり、その外断熱を採用しているメーカーの建物が優れているかのような表現がされています。
テレビコマーシャルや企業活動はそういうものかもしれませんが、特別に外断熱が他の断熱工法(例えば柱内に充填する工法)などより優れているということはありません。
断熱部分だけを見ると、確かに外断熱のほうが断熱材の厚さなどが薄くできたり、断熱材の継ぎ目部分の施工がやりやすかったりするメリットもありますが、断熱材の外側に外壁仕上げをしなければならないため、あまり厚い断熱材が使用できないことや仕上げ材料が軽いもの(例えばサイディング材)に限られたり、長い将来において外壁が垂れ下がる不安があることなどバラ色の話ばかりではありません。
結局は外断熱であろうと内断熱であろうときっちり計画されて施工されていればどちらも変わりはなく、その工法なりにその他の部分で一長一短が出るということです。
今回、外断熱をコマーシャルで強調したメーカーは、鉄骨系のハウスメーカーです。
鉄骨造の大きな欠点は火災に弱いこと(鉄が飴のように曲がる)と断熱における熱橋(断熱材の無い部分→鉄の構造体を通じて熱が移動してしまうこと)があります。
そのため、鉄骨造では断熱を確保しようとすると外断熱にしなければ断熱性能を確保できないのです。
ですから、このメーカーが外断熱を採用しているのは自社製品の欠点を克服するためであって、優れた工法をお客さんのために特別に採用しているわけではないのです。
自社の製品レベルを上げる努力をすることは良いことなのですが、テレビコマーシャルであのような宣伝を流されると、一般の人々が誤解することが怖いです。
企業のコマーシャルというのはそういうものだ。自社の欠点を克服し、それをメリットとして売り出すなどは企業の常識なのかもしれませんが、正確な知識が住まい手に伝わらないことが本当に怖いのです。
断熱については、伝統的な住宅建築ではまだまだ無視されている部分もあります。
断熱を行うということで、下手をすれば住まいそのものの寿命を短くしてしまうこともありえます。
断熱材そのものの良し悪しについても未だに結論は出ていません。素材としての性能の他に施工の正確さが確保できるかということが大切な事柄なのですが、そのあたりも正確に住まい手に伝わっていないように思われます。
断熱材の製造エネルギーや地球温暖化などに対する影響、もちろん価格なども考えると答えが出せないのが現状だといえます。
そういった中で、自社の製品のメリットとして簡単にあのような表現ができてしまうというのが今の住宅産業の問題点だと感じています。