日本一のつり橋の町

三和総合設計

2007年03月10日 08:02

今日の朝のテレビ番組で、日本一のつり橋の町、九重町の話題が放映されていました。

九重町は、以前、夕張市のように財政が破綻している町だったそうですが、最近、財政再建がなされ、なおかつ日本一のつり橋を多額の借金で建設しながらも健全な財政を保っているという話でした。

司会のMもんたが、地方の財政再建もやればできるじゃないか、W大臣もこれを見習ってがんばって欲しいともうしておりました。

この放送の内容を見て、共感できる部分とそうでない部分と両方ありました。

九重町がなぜ財政再建ができたかというと、バブル期に財政がすでに破綻していたので、国の推奨する箱物建設に乗らなかったことがひとつ。これは当たり前の話ですね。無駄とわかって作るわけですから、後でつけが来るのに決まっています。

もうひとつは、財政再建のために、町民が自主的に動いていることです。
これは重要ですね。何かと行政に対して文句はつけますが、自分たちが動こうとしない。ですから、いろいろな対策も実効性を発揮できないのは当たり前です。
大津市の場合も中心市街地の活性化に対して市がいろいろと力を入れようとしていますが、肝心の地元の動きが鈍いため実効性のある対策ができない状況です。こんな税金の使い方が最も無駄ですね。

そういった対策が実を結んで、財政の再建ができたようです。
その時点で、約20億(町の借金は17億)の費用をかけて日本一のつり橋を建設し、観光客の誘致に成功しているというものだそうです。
つり橋の通行料は大人で500円だそうですが、年間来客予想をはるかに上回る数だそうで、他の市町村からの視察が後を絶たないそうです。

この点が、私の納得できないところです。
市町村が自立して行くためには、もちろん収入が必要です。そのため、観光資源としてつり橋を建設したのでしょうけれど、もともと町にとっては必要のないものです。
日本一というのは何時かは抜かれることもあります。そういったものを頼りに町おこしをしなければならないのが地方の現状でしょうけれど、このやり方では限界があると思います。
日本経済もあまり良い状況だとはいえないと思いますが、まだまだ裕福な国です。その余った金が、九重町のつり橋見学に使われているだけです。
地方が疲弊し、都市部に富が集まる。それを地方が奪い合うというやり方では先が見えています。
その証拠に、さまざまな地方公共団体が視察に訪れ、第2の九重町を目指そうとしているわけですから、新しいもの好きの日本人は、いつかこのつり橋にも飽きてしまいます。
ディズニーランドのように常に新しいアトラクションで刺激を発信しないと立ち行かなくなってしまいます。

大津市の北部には琵琶湖大橋があり、その近くに「イーゴス」という大観覧車がありました。完成したときは東洋一の規模をうたい、お客さんが列を成したのですが、今は企業が倒産し、無残な姿を現しています。

このように本当に地域に根ざしていないものは限界があります。地方が地方として自活できる仕組みを日本全体でつくらないとまずいと思います。
九重町の方々にとっては、今の時点で仕方がない選択だと思いますが、テレビ番組で地方財政の再建方法の切り札のような言い方は正しくないと思っています。

そういった中で、九重町の町民の方々の考え方には救いがありました。
つり橋は永遠のものだとは考えていないとおっしゃっていました。50年後はつり橋を解体し、ここに財政再建に役に立ったつり橋があったという記念碑を造るのだとおっしゃっていました。
このような冷静な町民の方々ですから、自らが動くことにより財政再建ができたのだなと思いました。