建築職人の奉仕活動

三和総合設計

2007年09月20日 07:22

今朝の新聞に、建築組合の職人さんが地域の保育園などの庇や屋根を修理する奉仕活動を行なった記事が掲載されていました。

こういった奉仕活動は今年で30回目だそうです。
修理をしていただいた保育園なども喜んでいるでしょうし、その姿を見た子どもたちが、自分もそんな仕事が出来ればいいなあと思ったりするのでしょうね。

しかしながら、こういった奉仕活動を長い間しているにもかかわらず、職人の大切さというのはほとんど伝わっていませんね。

無償で修理していただけるわけですから、そういった事に関する感謝は皆さんしていると思います。
しかし、本当に大切なことは修理修繕が出来るのは職人だけであるということです。
建築組合の活動で市民の皆さんに伝えたいのはそこのところだと思うのですが、職人のおっちゃんたちが親切に無償で仕事をしてくれたということしか伝わっていないと思うのです。

建物を長く使い続けるためには日ごろのメンテナンスと修理、修繕が必要です。
最近の住まいの寿命が30年程度と非常に短いのは、建設費を抑えるために工業化などを進め、修理修繕がしにくい住まいが増えていることがひとつの要因となっています。

最近、建設されている住まいがプレハブであったりツーバイフォーであったりすることが建物の寿命を短くしているのですが、それに気づいている市民の方々はどれぐらいおられるのでしょう。
また、木造在来工法でも工場でプレカットするケースがほとんどになり、建物の構造を充分理解しながら住まいをつくることが出来る大工さんがどんどん減っています。

これからは簡単な修理は出来るけれど、本格的な改修などは出来ない大工さんばかりになってしまうでしょう。

近くの山の木を使うこと、大工技術を伝えることは建物の寿命を延ばし、気球温暖化防止にも良いわけですが、修理修繕のボランティアを行なう中でそういった内容が充分には伝わっていないと思います。
何事もお金で判断する社会の中で、「ただで修理や修繕を行なっていただいてありがとう」という感謝の気持ちしか無いように思います。

大工職人が技術の継承を行なっていくことそのものに感謝をする必要があるのですが、そこまで理解していただくにはもうひとつ説明がうまくいっていないように思います。

まだ、60歳前後の技術を持った大工さんがいる今のうちに何とかそういった思いも含めて市民の皆さんに理解を深めていただける努力が必要だと思います。