建築基準法の改正から3ヶ月以上経ちました。
やっと方向性が見えてきたみたいです。
国交省も法改正の趣旨をもう一度考慮し、今、起きている問題について理解し、新たな運用等の指導を始めたようです。まだまだ、頭の固い審査機関などもたくさんありますが。。。
今回の法改正についてもう一度さかのぼって考えて見ましょう。
結局、耐震偽装が主な問題ですね。
耐震偽装に手を貸した建築士、それを見抜けなかった審査機関。これを何とかしなければならないということで法改正を行なったのですが、新たに国の機関は世の中の現状がまったく見えていないことが判明しました。
根本的なところを改革しないとだめなのです。
耐震偽装が起こったところをもう一度思い出して見ましょう。
偽装が起こった建物は、分譲マンション、建売住宅、ホテルですね。
建物を安く建て、それをいかにも良いものに見せ、その差額で利益を上げようとする建物だけです。
ですから、今回の法改正では、それらの建物の規制を強化すること、審査機関の能力を上げること、この2点でよかったのです。
特にマンションについては、多くのデベロッパーがお金儲けのために次々と供給を進めています。
なぜなんでしょう。
マンションが建築基準法で優遇されていることも大きな原因です。
建物のボリュームを決めるときに影響する「容積率」。
敷地の大きさに対し、どれぐらいの床面積まで建設しても良いかという基準ですね。
200%という規制になっていれば、敷地が50坪であれば建物は100坪まで建設が出来るというものです。
この容積率の規制に対して、マンションの廊下などは面積の参入をしなくて良いことになっています。
また、マンションに限らないことですが、駐車場の面積は全体の5分の1までは容積率計算に参入しなくて良いことになっています。
普通の住宅の場合、駐車場は屋外にとることが多いのですが、マンションの場合、敷地が狭いのが通常ですから建物内にとることが多いのです。
そうすると廊下や駐車場の不参入部分を入れると建物のボリュームはかなり大きなものになります。
いつも書いているように建築基準法はこれ以下は認めないという最低基準です。
一般の建物は基準の半分ぐらいの容積率で建設されていることが多いですから、ぎりぎりいっぱいの容積率で計画し、緩和の基準を目いっぱい使ったマンションは周辺の建物に比べ3倍以上のボリュームになったりし、トラブルの原因となっています。
建築基準法だけでなく、消防法も消防設備の緩和が多くあります。
なぜこんなに緩和があるのか。
マンションの建設が経済の活性化に使われているからです。
つまり、マンション建設は儲けを上げることを前提に進められるのです。
ですから今回のような偽装が起こっても不思議はないし、もっと規制を強化すべきなのです。
最近、滋賀県では、湖岸沿いにマンションの建設が進められています。
街の中心部に近い湖岸沿いは商業利用をイメージし、商業地に指定され、容積率指定も大きな数値になっています。
湖岸が見えるというのを売り物にし、既成市街地からは壁のように見える建物を次々と建設しています。
湖岸が見えるということが売り物になるということは、他の市民にとっても重要なことだと容易に予測が出来ることですが、そんなことはまったく無視します。
そういう思想で建設される分譲マンションそのものを規制しないと、違った形で問題が出てくるでしょう。
都心部につくられる高層マンションで地震などの災害が起こったらどうなるでしょう。
建物そのものは耐震性能が確保されていても、そこに通じるライフラインがダメになったら大量の避難民が出てしまいます。
自分たちの建物にある集会所などが役に立たない場合、地域の避難所に大量の避難民が押し寄せることになります。
分譲マンションの建設はさまざまな部分で公共施設などの過不足に影響を与えますが、そのあたりも配慮されているとはいえません。
共同住宅と分譲マンション。同じような言葉ですが中味は違います。
効率よく住まうために共同住宅を建設する。
昔からヨーロッパでも行なわれている当たり前のことですが、日本などの分譲マンションとまったく違いますね。
金儲けのために周辺の環境を破壊し、世の中の仕組み自体もおかしくするようなマンションの規制を強化することが重要です。