耐震偽造事件の本質

三和総合設計

2006年04月22日 07:58

耐震偽造事件でまもなく姉歯元建築士や木村建設の社長の逮捕が間近なようです。

逮捕容疑を見ると、姉歯元建築士は建築士資格の名義貸し、木村建設の社長は粉飾決算と耐震偽造には関係のない別件逮捕のように見えますが実はそうでもないと思います。
まず、姉歯元建築士の方から。
建築士の仕事は施主に依頼を受けて設計図を作成し、現場を監理者として監理する。これが本当の仕事です。しかしながら、多くの仕事は許認可業務がほとんどになっています。今回のように資格を持たない建築デザイナーに名義を貸すほうがまだましな状況ではないかと思ったりします。名義貸しは良くないのですが、資格を持たないものでも設計という業務を真剣に行なっている場合はまだましです。
業界では、建設会社が設計能力も無いのに仕事を得るための手段として設計を看板にあげます。地方の町を歩いていると建設会社の看板には「設計施工」と書かれていることがたくさんあります。しかしながらそういう工務店で本当に設計事務所の登録をしている会社はあまり多くありません。設計事務所登録していても、それは営業の手段であって、自社で設計の業務をしている会社はほとんど無いといって間違いないでしょう。
ですから、お客さんを獲得したら、建築士事務所の名義を借りるかまたは建築士事務所に許認可のみを頼むのが通常で、まともな仕事として設計が行なわれていません。
このような本質的な部分を見直さないと今回のような問題は解決することはないと思っています。
私たちが一軒の住宅を設計すると図面枚数で30枚以上の図面を作成します。図面枚数だけで判断できるものではありませんが、工務店に頼むと数枚の設計図面で見積書が作成されてきます。どう考えてもおかしいですよね。

次に木村建設の問題。
建設業界は談合問題を始め、悪の温床のように見えます。
どの業界でも同じでしょうけれど、悪玉が業界を引っ張っていきます。
紳士的に見えるスーパーゼネコンの話は少し置いておいて、地方の建設業者で話をすると、すごく金儲けの好きな建設業者が少しいます。その会社が他より安く、無茶な受注を始めます。そういう会社は自社で施工をせずに、下請に丸投げでも平気でするような会社ですから、実は意外と損はしない。まじめな会社がそれに引きずられて安く受注し損ばかりする。そういった中で公共工事が減ってきてますます受注が減る。
公共工事は設計でも同じですが、発注にランクというものがあって、そのランク決めの中心が売上高です。ですから、儲からなくても仕事をどんどんやろうとする。仕事が無ければ粉飾もする。自分達の生きる道を安さに求め、安かろう悪かろうの仕事をおこなう。一線を越えて社会問題まで引き起こすといった具合です。

今の安けりゃいいんだ。売り上げが大きな会社がいい会社だ。メディアに流れている会社が安心な会社なんだという考え方が変わらない限り、第2、第3、第4、、、、の姉歯事件が出てくるのは間違いありません。

どうか私たち設計事務所にまっとうな仕事をさせていただきたいとお願いしたい思います。