毎週1回、短大で製図の非常勤講師をしています。
短大の一年生なので、まだまだ未熟なのですが、最近では住宅のプラン作りを教えています。
ただ、図面を引くというのではなく、生活を考えながら間取りを考える。間取りを考えるときはその部屋の中に置かれる家具などの配置をしながらプランを考えるということを行なっています。
設計の作業としては当たり前のことなのですが、ハウスメーカーなどの営業マンがプランを行なう場合は、単に部屋の大きさが決められ、具体的に手持ちの家具を配置して部屋の使い方をチェックすることはされないのが一般的です。
住まいを造って入居してから何か生活がしにくいというのは、そこら辺がうまくチェックされていないからだと思います。
そういったことが無いように、学生には家具を配置するように言うのですが、問題を感じることがいくつかあります。
一つ目は、家具などの大きさが実際自分の感覚となっていないことです。
図面に描く家具があまりに小さい。
いすの大きさが15cmぐらいのこともあります。
机やいすと壁の間のスペースも異常に小さい。カニのように横歩きをしても通れるかどうか。
経験の少なさかもしれませんが、住まいのプラン作りには重要なことが欠けていることが多くあります。
もう一つの問題は、居間についての考え方です。
居間を計画させると、台所や食堂と一体化したLDKタイプの間取りを計画する学生がほとんどです。
そういった中で、大きい部屋もあれば小さな部屋もあるのですが、どんな場合でも食卓テーブルと応接セットが置かれます。
食卓テーブルと応接セットで部屋がいっぱいになり、通るスペースが無いにもかかわらず平気で書きます。
いつの間にかLDKには応接セットと食卓テーブルが当たり前になってしまったのでしょうね。
戦後の住宅で、欧米への憧れから、居間に応接セットを置くことが多くなったのですが、応接セットって本当に快適でしょうか。
あのでかでかとした図体。掃除するにも邪魔になり、部屋の使い方を固定化する。
欧米への憧れ以外に良いことは少ないと思うのですが、椅子に座って生活するとなるとその形しかないのかもしれませんね。
私たちが提案する住まいは、座卓形式の居間の場合がかなりあります。
建材の冷たい床ではなく、自然素材の杉材などを使い、建物の断熱をしっかりすると床に座って生活する座卓形式の居間を計画することが可能になります。
大きなテーブルを置いて、あるときは食事用のテーブル。あるときはくつろぎの場としてのテーブル。あるときは子どもたちが勉強するための机。
日本の昔からあった自在性のある居間がこれからの住まいづくりのポイントになるのではないかと思います。
それにしても、「すりこみ」というのは怖いように思います。
LDKには食卓テーブルと応接セット。
ハウスメーカーの宣伝や展示場により刷り込まれた情報はすごいものです。
また、最近ではそういう住まいで育った子どもがほとんどになってきたのも事実です。
固定観念ではなく本当に楽しく過ごしやすいプラン作りを何とか教えていきたいと思っています。