クレーム社会

三和総合設計

2008年02月11日 07:34

今朝の新聞に、産科医へのアンケート結果が掲載されていました。

その結果によると、産科医の2割は「辞めたい」と考えているそうです。
その理由はというと、「自分の時間が短い」「精神的苦痛」などがあげられていますが、そのほかにも「訴訟のリスクの増大」というものがあります。
この「訴訟のリスクの増大」と答えている産科医は58.3%もいます。

まさにクレーム社会と言えるのではないでしょうか。

もちろん何事にも失敗や問題が起こる可能性はあり、それが訴訟に持ち込まれることも一定仕方がないと思いますが、世の中、クレームをつけたもの勝ちみたいな人が多くなってきたことも事実ではないでしょうか。

一部のクレーマーにより、社会にとって重要な産科医を辞めようと考えている人がいるということは大変なことですね。

クレーマーは医業の世界だけではなく、住宅の世界にも多くいます。
むしろ、住宅産業はクレームとの戦いと言われています。
その結果、住まい手にとって良い製品を選ぶことより、クレームが出ない製品選びが実践されており、そういった中途半端な製品をいかに良いものに見せるかに力がかけられていると言えると思います。

昔ながらの住まいは、住まい手にとって良いものがたくさんありますが、利点はどうしても欠点も同時に持つものもたくさんあります。
左官材料などはクラックがいきやすいという欠点があります。
微細なクラックなど何の問題も無いのですが、クレーマーにとっては格好の文句の付け所です。
木材も同じですね。呼吸する素材と言うことは、収縮による隙間や、木の割れなどは当たり前のように発生するのですが、こちらも文句をつけようとしたらいくらでも文句がつけられます。

こういったクレーマーに出会った人は、どうしてもクレームの出にくい材料を使う方向に行ってしまいます。
こうして、本当に良い材料は世の中から消えていくのです。

ここで声を大きくして言いたいことがあります。
このクレーマーに味方しているのが法律であるということです。
法律と言うのは、ものの最低条件を守るためにあるものが多いのです。
そのため、昔ながらの伝統構法などのような微妙な技術については判断が出来るものではありません。
建築基準法も住まいの最低条件を定めているのですが、その最低条件をクリアーしていないという大合唱がクレーマーからなされるのです。
最低条件をクリアーしていないということは、一見問題があるように思えますが、そもそも建築基準法で最低条件を定めなければならない住宅と、そういった法律が出来る前から存在していたちゃんとした技術とまったく別のものなのです。

法律では、ちゃんとした仕事をしない業者がいるから金物をつけなさいということになっているのですが、ちゃんとした仕事かどうかということに関係なく、法律に書いている金物が付いていないから欠陥住宅だというクレーマーの説明になるのです。

こうしたことが続くと、ちゃんとした技術者もいやになってしまいますよね。

法律というものは、ものの最低水準を守るためには大切なものですが、高度な技術を判断するのにはむしろ邪魔になっている部分もあります。
それだけでなく、クレーマーの利用のしどころになっていることも問題だと思っています。

クレーマーは自分の利益を得るために動いているのでしょうけれど、それが社会を変えることにもなっています。