伝統構法住宅講演会

三和総合設計

2009年01月19日 04:49

昨日、大津市の建設会館で伝統構法住宅の講演会を開催しました。

この講演会は私達が組織している木考塾(木造在来工法住宅を考える会)が企画し、湖国すまいまちづくり推進協議会が主催する事業です。

この講演会には100人以上の木造住宅関係者が参加しました。
滋賀県内からだけでなく、全国各地からの参加者で会場は満員でした。

講演会は2部構成になっていて、前半は木の家ネットの仲間である赤堀楠雄さんに国産材の動向についてお話いただきました。
後半は、武蔵工業大学の大橋好光教授に昨年末にEディフェンスで行なわれた実大実験のビデオを見ながら、実験結果について報告をしていただきました。

実験に参加していた私達でも実験体の各部を詳細に撮影されたビデオを見るのは初めてで、いろいろ事柄が確認でき、有意義な講演会でした。

当日、地元新聞である京都新聞が取材に来ていましたので、今朝の記事を確認したところ掲載されていたのは良いのですが、記者のコメントは中身を充分理解したものではありませんでした。
新聞記事に、伝統構法の木造住宅の耐震性について、「阪神大震災級の揺れでは壁が崩落し柱が折れるなど、地震への弱さを露呈した」と書かれていました。

大橋教授の講演では、実験体が建築基準法ぎりぎりの建物であること、それに対し基準法で想定している地震波では無傷であったことがちゃんと報告されていて、阪神大震災級の地震に対し目指す性能は充分あることが報告されているのですが、プロの方には充分伝わったと思いますが、素人の記者さんは実験のビデオ映像を見て、壁が落ちたり、柱が折れたりすることで、地震に弱い建物と感じてしまったのでしょう。

私達もこのあたりは充分気をつけて説明する必要がありますね。
実験は壊すためにしているのです。

ハウスメーカーの実験などは、地震に充分持つだけの耐力要素を確保し、その映像を撮ることにより宣伝に使いますが、今回の実験は、地震に耐えるぎりぎりの状況で行い、壊れる部分を確認することにより、今後の設計法の構築のデータにするのです。

ビデオを見るだけなら、誤解して当たり前ですね。
ひょっとしたらプロの方でも、ビデオを見て伝統構法は弱いと間違った理解をした人もいるのではないでしょうか。

でも、どんなに誤解を受けようとも、こうした緻密な実験などを通じることにより、より正確なデータが取り出すことが可能になり、さらに今後の課題も見えてくるのです。

とりあえず今回の講演会は大成功だったと思いますが、一般の方々への正確な情報伝達の難しさを新たに感じました。


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