伝統構法実大実験が終わりました

三和総合設計

2011年01月24日 07:48

1月21日(金)に伝統構法の実大実験が終了しました。

この実大実験は兵庫県の三木市にあるEディフェンスという施設で行われたものです。

実験の詳細については、こちらをご覧ください(映像などもアップされています)。

伝統構法と言えば、姉歯事件以来、確認申請が通りにくくなりました。
伝統構法が悪いわけではなく、法律の基準がちゃんと整備されていないため、法律どおりに指導すると確認申請が通りにくくなるというものです。

伝統構法と在来工法。
どこが違うのか。説明するのは難しいですが、伝統構法は金物や構造用面材を使うのではなく、木材による伝統的な仕口や継ぎ手で接合したり、木組みや土壁など、昔から日本にある伝統的な技法や材料を使って建物の構造要素とするものです。

今年の実験の課題の中で大きなものは「石場建て」です。
伝統構法=石場建てなのかというと必ずしもそうではないかもしれませんが、多くの建物が石場建てとなっています。
今までの実験などでは「石場建て」についての解析がほとんどされてきませんでしたが、今年度はそのあたりに焦点をあてて実験が進められました。

土台に緊結しないと上部構造に地震力が伝わりにくい。
そのため、伝統的な建物のような開放的な建物が建てやすい。
でも大きな地震が来た時に柱が動いて支障がないかという話がいつも出ます。

今回の実験でそのあたりを解析しようというものでした。
結果は最終の報告を見ていただきたいのですが、私が見た限りでは「石場建て」の良さが活かされるようなデータが取れたと思います。

たった一年の実験ですべてがわかるわけではないのですが、これから何度もいろいろな実験や研究を進めることにより、伝統構法というものが構造的に解明され、建てやすくなることでしょう。

伝統構法の解析は難しい。
だから大工さんや設計者の自己責任に任すようにしたら良いという人もいますが、それは大きな間違いでしょう。
物事の進め方にはいろいろなやり方があります。
もちろん自己責任で建物を建てるというやり方もありますが、そうすると多くの人は不安で伝統構法を採用しないでしょう。

伝統構法を建てる仕事をやり続けたいという大工さんと難しいことはわからないが伝統構法を建てたいという施主さんがセットになると建設がされるようになりますが、伝統構法はそんなものではない。
環境の時代を迎え、現代的な構法や材料にない良さがあるのです。

個人的に建てたいという意欲を満たすものだけではなく、社会にとって大事なものであるという認識が必要だと思います。
多くの建物が現代的な構法やプレハブなどで作られている今、大きな国費を使って実験や研究を行う理由は何なのかを考えなければなりません。

国民の多くの人たちが、伝統構法の良さを理解し、安心して建てられるようになることが重要なのです。

一大工、一設計者が伝統構法をやりたいという欲求で進められる事業ではないと私は思っています。

こういった実験や研究が進められることにより、伝統構法が金持ちの道楽から国民の住まいになることを願っています。



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