昨日、宮城県沖でマグニチュード8.8の地震が起きました。
マグニチュード8.8と言えば、日本では最も大きい地震だと思います。
以前も書いたと思いますが、マグニチュードの値は対数と関係があるため、数値が少し大きくなっただけでエネルギーは数倍になってしまいます。
マグニチュードが6の後半ともなると大きな被害がでる。
7台であれば深刻な被害がでると思いますが、それを上回る8以上。
しかも8の後半です。
こんな地震が起こるかとはとっても思えなかったものです。
昨日は、夕方から名古屋で伝統構法の設計法の検討委員会に出席するために、京都駅に出かけていました。
そこで委員長の鈴木先生と一緒になり、京都駅に停車している新幹線の発車を待っていたのですが、いつまでたっても動く気配はない。
仕方なく大津まで戻り、そこに車を事務所から回送してもらい名古屋まで出かけました。
国交省の木造振興室長は少し早めの新幹線に乗られていたため、二時間弱の遅刻で出席されましたが、他の東京方面から来られる委員の先生方はほとんど欠席でした。
伝統構法の耐震性を考え、設計法を考える大事な委員会の日にとんでもない地震が発生しました。
マグニチュード8以上、震度7などという地震はめったに来ないのですが、一旦そんな地震に襲われるとひとたまりもありません。
みなさんに覚えていただきたいのですが、今の建築基準法で設定されている地震の規模はこんな大きなものではありません。
建築基準法の構造基準を守っているからといって、こんな大きな地震に耐えられるとは限らないということです。
また、建築基準法の1.25倍の地震に耐えられるように作っている長期優良住宅はどうかというと、一般的には建築基準法ぎりぎりの建物よりは強いといえるのですが、基準よりも、いかに耐震的に作っているかということが大事だといえます。
法律にしても制度にしても、その基準を守っていても、プロから見れば危ない建物はたくさんあります。
建物が安全かどうかをちゃんと判断できる人は非常に少なく、基準や制度の数値をクリアーしているかどうかしか判断できない建築士がほとんどだといえます。
最近の住宅は一階に大きなリビングがあり、壁が少ない。
それに加えて、構造的な知識が少ない営業マンがプランを決めることが多いです。
私たちもそんなルートで仕事を依頼されれば、建築基準法をクリアーしているかどうかしか判断できない立場におかれてしまいます。
木造の住宅は平屋が基本。
少しもったいないので、税金のかからない範囲で2階を作ったりしていたのですが、いつの間にか2階に立派な個室を取るようになり、しかも大きなリビングにあこがれて本来多く必要になる一階の壁が非常に少ないプランで家が建てられています。
そんなプランであっても、ここに一本柱があるだけでかなり強いのだがと思うときでも、あっさり居間と続きの使い方をしたいのでとってくださいの一言。
重要な柱をとっても建築基準法の確認申請が通らないことはない。
でもここまで大きな地震がくると、確実に柱を取ってしまった建物が先に壊れるでしょう。
大きな地震が来ても非常に大きなゆれが来る部分は一部です。
そんな中に運悪く当てはまってしまえば仕方ないと言えますが、その周辺でもいい加減な建物を作れば、他の建物は無事だけれど私の建物は壊れてしまったということになりかねません。
もう一度言いますが、建築基準法は劣悪な建物を取り締まるためのものであって、建物が優良かどうかを判断しているわけではありません。
建築基準法をぎりぎりクリアーしている建物でも、建物の基本を守って建てている建物とそうでない建物では結果は全く違ったものになると思います。
地震が少し収まってきたら、どんな建物が弱いとかそんな話が言われるようになりますが、そんな話に乗せられないことです。
今回の地震は長周期の地震だったようですが、地震の種類によって被害は全く違うものになります。
そんなことより、自分が建てたい建物の基本を守って作ることが非常に大事なことです。
私は、阪神大震災後、木考塾という木造のプロの人達の勉強会をやり続けていますが、それでもどうにもならないような自然の力。
それでもあきらめずにさらに勉強を重ね、住まいをどういうふうに作るべきかをさらに追求していきたいと思いました。
私たち建築士の仕事の本筋はそういうところにあるはずです。
単に建物を建てるための許可を取るためだけにあるのではありません。
特に住宅の世界では建築士の力が低く見られています。もう少し住まいに本気で係わる建築士が増えるように努力していきたいと思います。
人気ブログランキング参加中。
↑ の部分をポチッと押していただくだけでOKです。
クリックお願いします。