2006年01月16日

雨戸

いつも、最近の住まいづくりをぼやいていることが多いので、今日は私から住まいの工夫について一つ。


右の写真の建物は、私の自宅であり、三和総合設計の住まいの展示場でもあります。
わりと多くの人に見学にきていただきますが、皆さん第一声「わー木の家ですね」と言われます。
外部で、木を使っているのは、玄関の扉と玄関横の壁の部分だけです。
それでも皆さん木の家と感じられるのは、屋根の軒裏が化粧野地板になっているからですが、もう一つ秘密があります。


前の写真ではわかりませんでしたが、南面に廻ると木の雨戸が目に入ってきます。
そうです。この雨戸も、外観が木の家と感じられる大きな要因の一つなのです。
南面は、すべてモルタル塗りの吹付け仕上げです。そういう仕上げ面に少しでも木の要素があるだけで木材の良さが引き立つのです。

このアイデアは私が考案したものではなく、どこかの建築雑誌に紹介されていたものを自分で改良したものです。
既製品のサッシの雨戸枠を利用し、その枠の中に木の枠をはめ込み、その枠に木製のガラリ調に削り出した木材をはめ込むことにより、いつでも通気が取れる雨戸になるのです。
言葉で書くのは簡単ですが、いろいろな道具を使いこなし、微細なところを改良を重ね、製作には割りと手間がかかります。
外壁に木を使うとメンテナンスに木を使わなければならず大変なのではないですかとよく聞かれますが、たいしたことはないのですが、忙しい身の方には多少負担になることもあります、しかし、この雨戸の良いところは、いつでもはずして塗料の塗り足しができることです。
木の良さを伝えて行きたいと思っていますが、現代の生活形態にもあわす工夫が必要だと思っています。


右の写真は内部から見た写真です。
横板は斜めカットしてあり、板同士の感覚を1cm弱隙間があけてあります。
こうすることにより、雨戸を閉めた状態でも風が通る構造とすることができるのです。

先ほども書きましたように、都会(大津は都会といえるほどでもありませんが)では共働きの世帯が非常に多く、日中の夏の日差しや、室内の温度上昇で、夜の冷房費がたくさんかかったりすることがあります。
この雨戸を利用すると、雨戸を締めることによりいやな日差しをカットしながら、日中の通気を確保することができます。(雨戸の施錠は簡易なものなので、そのあたりは工夫が必要ですが)

こういった工夫は他のハウスメーカーのように展示場だけで行なわれているわけではありません。
私たちが設計した住まいの中で、あちこちで採用しています。
製作してくれる大工さんに製作図面を渡して製作していただくのですが、ちょっとわからなくなったら、私の住まいに見に来ておられます。

このように、私たち設計事務所の仕事というのは、間取り図だけでは見えないさまざまな工夫をしています。


雨戸づくりといえば思い出が・・。
右の写真は・・・。そうです。三和総合設計、富山分室。
富山事務所長の自宅兼仕事場。見学もできます・・・。

ここにも雨戸があります。
写真で見えるところに3箇所。裏にも1箇所。それも、すべて、はき出し窓ばかり。
自邸で造ったあと久々に自分たちで雨戸をつくろうということでがんばりました。
富山事務所長が滋賀にやってきて、3日ぐらいかけていっしょに造ったのですが、前と違って量は倍ぐらい。しかも、前のときは、ゆっくりと時間をかけて造ったのですが、今回は限られた時間の中で造らなければならない!
二人とも無言で黙々と、頭にテーブルソーから吹き上げるオガクズで白髪だけでなく、眉毛の上までオガクズをためながらへとへとになった思いがあります。

私たちは、設計者でありながら職人さんたちの苦労がわかりたいといつも思っています(私たちも設計職人ですから)。
こういう体験をすると、苦労と工夫というものも自分たちが実際感じ取れるので非常に良いことだと思っています。
工務店の方にも、私たちの気持ちをわかってほしいと思うことも少しあったりもしますが・・・・。

長い話になりますが、雨戸って南の地域のものなのですね。この富山事務所の雨戸を造るときに初めて知りました。
「社長ーーーオ。富山って雨戸があんまりないんですよ。」
「そんな馬鹿な。」
いろいろ調べてみると、滋賀県から北陸路を北上すると福井県に入ったとたん、雨戸がついていない家が多い。
短大の各地から来ている学生にも聞いてみたところ、関西より南(東西は不明)の地域が多いみたいですね。
台風の問題、防犯の問題などいろいろ理由があると思いますが、単なる地域の常識ということもあるようです。

アルミサッシやガラスの強度が上がったので、台風などでガラスが割れたりすることもなくなり、雨戸もお金がかかるのでやめてしまおうということもあると思いますが、こんな多機能な雨戸なら、一回試してみてもおもしろいのではないでしょうか。



Posted by 三和総合設計 at 08:16│Comments(0)
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