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2006年01月23日

伝統継手・仕口

今日は木造住宅の骨組みの継手や仕口について。

木造住宅の良いところはたくさん述べられますが、アキレス腱はどこでしょうか。
木造住宅は地震に弱いなど間違った情報が流れていますが、木造住宅のアキレス腱をしっかりした対応をしておかないとやはり地震に弱い建物になりますね。
では、どこがアキレス腱なのでしょうか。

ずばり、木と木の接合部です。
木造住宅は山に生えている木を使って建物をつくります。
鉄筋コンクリート造のようにコンクリートを流し込んでつくるわけではありません。
市街地で作る際は運搬や建方を考えると柱や梁の長さに限界があります。ですから、必ずどこかに継手や仕口というものが出てきます。この、継手や仕口がうまくないと弱い建物になってしまいます。


右の写真は、我が家の梁に使われている継手で、「金輪継ぎ」という継手です。
なかなか美しいでしょう。私たちが造っている住まいは、ほとんどが梁や柱、その他木部が現れています。前にも書いたように、木の持つなんともいえない美しさを生活に取り入れるためです。そのためには、住宅金融公庫融資の条件として定められている金物を利用した継手では対応できないのです。(もちろん、この金輪継ぎでも住宅金融公庫融資はOKですけど)強度も金物を使った継手よりも強いのですが、今のところ、工場で行なうプレカットではこの継手はできません。もちろん、腕の悪い大工さんでもできません。昔はしっかりした技術を持っていたが、楽を覚えた大工さんにもできません。
住まい手のために、自分の技術をおしみなく駆使しようとする大工さんしか現実として施工していません。


この写真は、柱と梁を接続する部分です。
長ほぞ込栓という仕口です。
ここでも一般的には金物を使うのですが、木の住まいには伝統的な継手でないと見てられません。
木の住まいを売り物にしようとしているハウスメーカーはこのような継手はしていないでしょう。木の住まいといっても、骨組みは外国産の腐りやすい集成材を使い、もちろん天井を貼り、木造の骨組みを見せるなんて事は絶対しないでしょう。

この、長ほぞ込み栓ですが、建築基準法では仕口としての強度はあまり強い数値とはなっていませんが、私たちが実際ポリテクカレッジで実験したところ他の金物よりも強いことがわかっています。建築基準法の取り決めでは長ほぞ込栓と書いてあるだけで、ほぞのサイズ、込栓のサイズの指定はまったくしていません。伝統的な継手は基準から無視されていたのだと思います。そんな考え方だから、このぐらいの数値は最低あるだろうという数値にされているのだと思います。

いい加減な基準であっても法律は法律。私たちの設計する建物は柱の引き抜き力をかなり少なくなるように配慮しています。引き抜きがかからない柱にもすべて長ほぞ込栓の施工もしています。基準よりも数値的に余力があることと、引抜がかからない(計算上)とされている柱にも施工することにより充分な余力を確保することを考えています。

また、限界耐力設計法で、長ほぞ込栓で柱、梁を組むだけで一定の地震力に対する耐力があることが数値で確かめられました。最もこんなことは大工さんの常識では当たり前のことなのですが、遅れて数値化されたということです。

前回のブログにも書いたように、木の住まいの良さは、木を使うことにより生活に潤いがでることだと思っています。
ただ強ければ良いならば方法は何通りもあるかと思いますが、木の良さを活かす継手や仕口はやはり伝統的な継手や仕口しかないと思います。

こう書くと、私たちは昔のままの伝統的な建て方で建物を建てているように聞こえると思いますがそうではありません。
構造には筋かいを使っています。昔の技術と最近の技術。両者をあわせることにより、進歩があると考えています。新しい技術を使って、ぎりぎりの設計を行ない金儲けに使うというのではなく、住まい手のために使うのなら、いろいろな方向性があるのですよ。
そのあたりは長くなりますので、また次回に。。。



Posted by 三和総合設計 at 07:46│Comments(0)
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