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2008年04月03日

伝統構法とは何か

建築基準法の混乱からもうすぐ1年を経過しようとしています。

大きな建物は別として、住宅の着工件数は改正前の水準に戻ってきたようです。

そういった中で、未だに解決していない問題が伝統構法の住宅の確認申請問題です。
ここでいう伝統構法とは、現行基準法の基準に適合していないやり方を持つものを伝統構法と呼んでおきましょう。
昔の建物は、柱が石の上に乗せられて作られています。
こういった建物は現行の基準法が鉄筋コンクリートの基礎の上に建物を乗せることを基本的に要求するように改正されたため、「既存不適格」という扱いになっています。

石の上に柱を乗せるような建て方が違法なのかと言うとそうではなくて、基準法の仕様規定に合わないため、自分たちで性能を確かめれば問題ないのです。
でも、昔から日本で建てられている建物を、法律の仕様規定に規定しないなんてまったく日本の文化を無視しているといえますよね。

そういったことに対応するために、伝統構法を仕様規定化したり、実験で安全性を確かめ、計算しやすいようにする試みがなされようとしています。

そこで問題になるのが伝統構法ってどんなものだということです。

法律で仕様規定化するにしても、実験で安全性を確かめようとしても伝統構法を一定、類型化しなくてはなりませんが、それが非常に難しいのです。

伝統構法という言葉自体も、現行の基準法の仕様規定で定められていないものという見方も出来ますし、昔のやり方を踏襲しているものはすべて伝統構法だという考え方もあります。ですから、一言で伝統構法といってもどういった意味で使うのかで定義は変わってきてしまいます。

分かりやすいように地震に耐えるやり方だけを考えて伝統構法を定義する方法もあります。
最近の建て方は建物を強く作り、地震に耐えようとする。
しかし伝統構法は、地震力を柔らかな躯体で逃がしながら耐える建物であると考える。
そう考えると、基礎の上に乗せる木造住宅はいくら腕の良い大工が伝統技法を駆使して建てても伝統構法ではないと考える考え方もあります。

こんな風に伝統構法を考えれば考えるほど混乱にいたってしまいます。

少し前のブログにも書きましたが、伝統構法を定義しようとすること自体が無理があるのだと思います。
なぜ伝統的な建物が大事だと考えられるのでしょうか。
住まいを造るときに、その関係者がさまざまな事象を考え、丁寧に造ってきたのが昔の住まいづくりです。
それが伝統構法として今に伝わっているのでしょう。

ですから、近くの材料を使って建てていた時代を考えると、地方地方で建て方、仕様が違うのは当たり前です。
それをいくつかの枠にはめ、法律や制度化しようとするのにそもそも無理があるのでしょう。
伝統文化を守るために実験を行なう。
そのために伝統構法の仕様を決めていこうという考え方自体が、伝統構法をないがしろにするものだと思います。

法律や制度は悪いやつらを取り締まるためのものだと思いますが、最近では、その法律の枠の中に入れることが良いことのように考えられるようになってきました。
非常に難しいことかもしれませんが、伝統構法を本当に守るためには地方の文化や技術を守る、もっと極端に言えば職人個々の技能や工夫を大切にするという考え方が根本にないといけないと思います。

そういった中での研究や実験なら大歓迎ですが、今の日本の状況なら実験で確かめられたものだけが社会に通用し、それ以外はダメという扱いになってしまうでしょう。

地震に強い弱いというだけの話なら、伝統構法でも強いものもあれば弱いものもある。
古くなったものは以前は強かったが、現在は弱いというものもある。

単純に構法と地震の強さは関係がないと思います。
ちゃんとした技術者が造った住まいは、伝統構法であっても、筋違構法であっても、ツーバイフォー構法であっても強いものは強い。
いい加減なものはどんな構法であっても弱いものは弱い。

構法の良し悪しは耐震性以外のところにあるのではないでしょうか。

伝統構法を建築基準法の「既存不適格」状態から脱却させることは大事なことですが、耐震性だけに着目し、大事なものを失わないようにしなければなりません。 



Posted by 三和総合設計 at 08:08│Comments(0)
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