2005年11月22日

姉歯問題

今、世間の中で大きく取り上げられているのが、耐震偽造設計事務所の姉歯建築設計事務所。
とんでもないことをするものだと思いますが、確認審査機構もひどいもの。偽造を見逃しておいて、私たちに責任はないといった発言もされているようです。

この問題はあちこちで取り上げられていて、その内容もいつもよりは詳細に一般の方々に伝えられているので、私はいつものようにもっと踏み込んだ議論をしたいと思います。

そもそもの問題はいつものように、「住まいが金儲けの手段になっている」ということが根本の問題であるといえます。
私たちの事務所も昔、デベロッパーのマンションの設計を手伝ったことがあります。
その時のデベロッパーの状況を思い出すと、デベロッパーは住まい手(購入者)のことを第一には考えていないということです。
どうしたら高く売れるか。お得に見えるか。法律を違反しない範囲(少々捻じ曲げて解釈するのは大いに結構)でどこまで突っ込むか。そんな話ばかりでした。周辺の住民のことなんか考えたり、法律の本来の趣旨を考えたりした設計をしたら、へたくそな設計事務所で、違反すれすれの内容を行政に掛け合って了解させたり、少々危ない構造計画でも売れるためのデザインを行なえばうまい設計事務所。こんな判断の仕方です。
ですから、住まい手のための良い建物などは絶対考えていません。法律の線を超えるか超えないかだけで、今建設されている建物は50歩100歩だといえると思います。

なぜそんなことになるのか。
答えは簡単です。
設計事務所が発注を受ける相手が住まい手ではなく、デベロッパーや建売業者、工務店だからです。
どんなにおかしいと思ってもお金を払ってくれる相手に文句が言いにくいのが今の社会です。
住宅を建てるときに住まい手の方から直接仕事を依頼されたら完全に住まい手の方のことを考えて設計できますが、工務店から頼まれれば工務店がどう考えるかということがいつも間に挟まってきます。工務店の方々もいろいろな方がおられ、問題がある方ばかりではありませんが、建売業者、マンション販売業者などとなるとどうでしょう。お金儲けができる範囲の中で住まい手のことを考えるということが基本となるでしょう。これはハウスメーカーでも同じことが言えます。
こういう問題が起こらないようにするためには、住まいづくりを金儲けの手段として行なう業者をすべて排除するしか方法がありません。排除といっても、私が問題としているハウスメーカーなどでも社会的な信用を得ている状況のなかで排除することなどできません。住まい手の方々が賢くなるしかないのです。その住まい手のお手伝いをするのが本当の設計事務所です。
設計事務所の中には住まい手の方々のお金を借りて作品づくりばかりしている方も多くおられます。世の中にはその作品を良いと考え、発注する人もおられます。設計事務所の仕事は奇抜な作品づくりであって、普通の住まいを造るときは関係ないような雰囲気になっています。
こんな、住宅業界の根本を変えないと問題は解決しません。

法律という線からみると欠陥住宅はそんなに多くはありませんが、本来、住まいはどうあるべきか、どんな住まいが良いかと考えればほとんどの住まいが欠陥住宅に近いといえる状態です。
法律というものは、業者を守るものでしかありません。問題が起こっても法律を守っていれば責任を問われることはないのです。でも住宅の供給者の考え方は「住まい手のため」ということではなく本質的な部分(お金を儲ける手段)はあまり変わらないのです。法律を破るところまでいくか、そうでないかだけで考え方はほとんど変わらないということです。
耐震の問題も同じで、建築基準法でチェックされた建物が必ず耐震性が高いかということも一概には言えません。
大きな地震が来たときに、倒壊した建物が弱い建物で、倒壊しない建物が地震に強い建物ということが判断されるのであって、法律で判断されるものではないのです。
ただ、世の中にはあまりにもひどい業者がいるから、一線を引いてそれ以上の建築を義務付けているわけですが、多くのデベロッパーなどはその法律のぎりぎりを狙って設計するようにせまるわけです。今回どのような状況のなかで建築基準法を無視するような行為に至ったのかはわかりませんが、利益を追求するために必要になったため、一線を越えただけで、考え方はほとんど変わらないということを充分考える必要があるのです。





Posted by 三和総合設計 at 15:03│Comments(0)
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