
2006年01月25日
オープンネットの問題点
設計者が仲立ちして住まい手が工務店を抜きにして直接各種の職人さんと契約を結ぶ方式をオープンネット方式と呼んでいます。
私は、コラムの中でこの方式の問題点を1年半ぐらい前に書きましたが、整理して何が問題なのかをもう一度書いてみたいと思います。
一番の問題は、このオープンネット方式が今までにない画期的なものだと表現しているところだと思っています(どんな住まいのフランチャイズシステムも画期的だと表現していますが)。前にも書きましたが工務店には各種の専門工事を管理するという重要な仕事があります。これを実際行なっているのが現場監督さんです。工務店を抜きにして建物を建てるということは、オーケストラで指揮者がいないようなものです。仮に、すべての職人さんが良い腕をしていたとしても、それぞれが勝手な仕事をすれば全体としても良いものはできません。職人同士の連携もうまくなくなり、工期も延びてしまったり、職人さん同士の仕事の取り合い部分などがうまく収まらないことも考えられます。もう一つ工務店の重要な仕事に引き渡した建物全体に責任を持つということがあります。分離発注では完成後の保証について、誰が責任を取るのかあいまいなところがあります。工務店が請け負う場合は、どんな問題についても工務店が責任を負いますが、分離発注方式では、各専門工事の取り合い部分の微妙なところはどの職種の職人さんが責任を取ってくれるのかはっきりしない場合があります。いくら保険で対応しようとしても、お金での解決しかありません。
このように、オープンネットでは、工務店の本来必要な仕事を省いて価格を下げることを考えています。さらに問題なことは、各職種(例えば大工工事、左官工事、屋根工事、建具工事など)ごとに入札をすることにより、もっと価格を下げようともしていることです。入札して一番安い職人さんをそれぞれ選んでいくと、見知らぬ職人同士が一つの住まいをつくることになり、現場監督する工務店がいないということであればよけいに、職人同士のトラブルが発生するのは容易に予測できます。このようなやり方は、あまり良くない材料などを使いローコストを住宅を造るのとなんら変わりはありません。現場管理という重要な仕事を手抜きし、見知らぬ大工さんと左官屋さんなどが一緒に仕事をしてうまくいくはずもないのですが、価格が安くなるのは間違いありません。
こういったやり方を「価格の見える家づくり」と題して、マスコミを通じて大きく宣伝することにより、理想の住まいであるかのように表現しているのは、同じ設計者として残念な気持ちです。
住まい手の方々の中には、工務店の住まいづくりに失望し、ハウスメーカーの住まいは好きになれないという方もおられますが、そのあたりをターゲットにして設計事務所が営業活動を行なっているだけで、理想の住まいづくりとは言えないと思っています。建築士に住まいの設計を担当して欲しいという思いと住まいをローコストにしたいという希望に対して、一般の住まい手にわかりにくい部分を覆い隠しているだけなのです。
「餅は餅屋」とよく言いますよね。住まいづくりに対して、設計事務所が設計を担当することは良いことだと思いますが、住まいづくりに重要な現場管理という仕事をカットしてしまう必要がどこにあるのでしょうか。住宅の世界だけでなく、日本の建築業界では工務店の設計施工というやり方がありますが、そのやり方に対して多くの設計者は問題があると主張してきたはずです。工務店が営業手段として設計を行なう(設計料が無料と言ったり、極端に安かったり)ことは問題である。良い設計ができるはずがないと言ってきたはずです。それが、今、工務店が本来担当すべき管理という仕事を中途半端に設計者が担当しようとするわけですから訳がわからない考え方だと思います。
こういうシステムがうまれてきたのは、設計事務所が住宅に対して力を発揮したいという希望からだと思います。先にも書いたように住宅に対して設計事務所が設計を担当すべきだと思いますが、日本の場合、住宅は工務店に頼んで建てるものだという考え方があるものですから、なかなか設計を依頼されることがありません。また、慣れない設計者が住宅を担当するとあれこれ盛り込みすぎて住まい手の予算を大幅に超えてしまうことがあります。それを、工務店のせいにする設計者が意外と多いのです。自分の概算見積もりが甘いのですが、それが工務店のせいだと勘違いし、工務店をはずせば価格が安くなるのではと安易な判断をしてしまうのです。住まい手に対し、設計事務所の存在の重要性を訴え、理解していただくことは重要ですが、問題あるやり方で設計業務を受注しても意味がないと思います。
オープンシステムがもし意味があるとしたら、まわりに存在する工務店がひどい工務店ばかりで、仕事を託すべき施工者がいない場合だけでしょう。それでも出来上がる住まいは理想の住まいではなく、70点ぐらいの出来の住まいであると思います。
私は最近の住まいの造り方を残念に思っています。工務店は自分の仕事を確保するために設計を内部で行なおうとします。設計という仕事は非常に大切なものです。設計がうまくなければ途中の施工がいくら丁寧で良い仕事をしていても良い住まいはできません。
反対に設計者は工務店を抜きにすることで自分達が仕事を得ようとします。
こんなことを繰り返しても良い住まいはできないし、住まい手の方々からも理解されません。
住まい手の方々のことを考えれば答えは簡単です。先ほども書いたように「餅は餅屋」です。優秀な設計事務所が設計を担当し、優秀な工務店が施工を担当する。
世の中に、おかしな設計者、おかしな工務店がいるから、おかしなシステムが理想に見えてしまうのです。
私は、コラムの中でこの方式の問題点を1年半ぐらい前に書きましたが、整理して何が問題なのかをもう一度書いてみたいと思います。
一番の問題は、このオープンネット方式が今までにない画期的なものだと表現しているところだと思っています(どんな住まいのフランチャイズシステムも画期的だと表現していますが)。前にも書きましたが工務店には各種の専門工事を管理するという重要な仕事があります。これを実際行なっているのが現場監督さんです。工務店を抜きにして建物を建てるということは、オーケストラで指揮者がいないようなものです。仮に、すべての職人さんが良い腕をしていたとしても、それぞれが勝手な仕事をすれば全体としても良いものはできません。職人同士の連携もうまくなくなり、工期も延びてしまったり、職人さん同士の仕事の取り合い部分などがうまく収まらないことも考えられます。もう一つ工務店の重要な仕事に引き渡した建物全体に責任を持つということがあります。分離発注では完成後の保証について、誰が責任を取るのかあいまいなところがあります。工務店が請け負う場合は、どんな問題についても工務店が責任を負いますが、分離発注方式では、各専門工事の取り合い部分の微妙なところはどの職種の職人さんが責任を取ってくれるのかはっきりしない場合があります。いくら保険で対応しようとしても、お金での解決しかありません。
このように、オープンネットでは、工務店の本来必要な仕事を省いて価格を下げることを考えています。さらに問題なことは、各職種(例えば大工工事、左官工事、屋根工事、建具工事など)ごとに入札をすることにより、もっと価格を下げようともしていることです。入札して一番安い職人さんをそれぞれ選んでいくと、見知らぬ職人同士が一つの住まいをつくることになり、現場監督する工務店がいないということであればよけいに、職人同士のトラブルが発生するのは容易に予測できます。このようなやり方は、あまり良くない材料などを使いローコストを住宅を造るのとなんら変わりはありません。現場管理という重要な仕事を手抜きし、見知らぬ大工さんと左官屋さんなどが一緒に仕事をしてうまくいくはずもないのですが、価格が安くなるのは間違いありません。
こういったやり方を「価格の見える家づくり」と題して、マスコミを通じて大きく宣伝することにより、理想の住まいであるかのように表現しているのは、同じ設計者として残念な気持ちです。
住まい手の方々の中には、工務店の住まいづくりに失望し、ハウスメーカーの住まいは好きになれないという方もおられますが、そのあたりをターゲットにして設計事務所が営業活動を行なっているだけで、理想の住まいづくりとは言えないと思っています。建築士に住まいの設計を担当して欲しいという思いと住まいをローコストにしたいという希望に対して、一般の住まい手にわかりにくい部分を覆い隠しているだけなのです。
「餅は餅屋」とよく言いますよね。住まいづくりに対して、設計事務所が設計を担当することは良いことだと思いますが、住まいづくりに重要な現場管理という仕事をカットしてしまう必要がどこにあるのでしょうか。住宅の世界だけでなく、日本の建築業界では工務店の設計施工というやり方がありますが、そのやり方に対して多くの設計者は問題があると主張してきたはずです。工務店が営業手段として設計を行なう(設計料が無料と言ったり、極端に安かったり)ことは問題である。良い設計ができるはずがないと言ってきたはずです。それが、今、工務店が本来担当すべき管理という仕事を中途半端に設計者が担当しようとするわけですから訳がわからない考え方だと思います。
こういうシステムがうまれてきたのは、設計事務所が住宅に対して力を発揮したいという希望からだと思います。先にも書いたように住宅に対して設計事務所が設計を担当すべきだと思いますが、日本の場合、住宅は工務店に頼んで建てるものだという考え方があるものですから、なかなか設計を依頼されることがありません。また、慣れない設計者が住宅を担当するとあれこれ盛り込みすぎて住まい手の予算を大幅に超えてしまうことがあります。それを、工務店のせいにする設計者が意外と多いのです。自分の概算見積もりが甘いのですが、それが工務店のせいだと勘違いし、工務店をはずせば価格が安くなるのではと安易な判断をしてしまうのです。住まい手に対し、設計事務所の存在の重要性を訴え、理解していただくことは重要ですが、問題あるやり方で設計業務を受注しても意味がないと思います。
オープンシステムがもし意味があるとしたら、まわりに存在する工務店がひどい工務店ばかりで、仕事を託すべき施工者がいない場合だけでしょう。それでも出来上がる住まいは理想の住まいではなく、70点ぐらいの出来の住まいであると思います。
私は最近の住まいの造り方を残念に思っています。工務店は自分の仕事を確保するために設計を内部で行なおうとします。設計という仕事は非常に大切なものです。設計がうまくなければ途中の施工がいくら丁寧で良い仕事をしていても良い住まいはできません。
反対に設計者は工務店を抜きにすることで自分達が仕事を得ようとします。
こんなことを繰り返しても良い住まいはできないし、住まい手の方々からも理解されません。
住まい手の方々のことを考えれば答えは簡単です。先ほども書いたように「餅は餅屋」です。優秀な設計事務所が設計を担当し、優秀な工務店が施工を担当する。
世の中に、おかしな設計者、おかしな工務店がいるから、おかしなシステムが理想に見えてしまうのです。
Posted by 三和総合設計 at 00:01│Comments(0)