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2006年02月14日

NPO法人の建物が建築基準法違反

滋賀県彦根市でNPO法人の造った建物が建築基準法違反ということで、法人の代表が逮捕されました。

この法人が建てていた建物は伝統的な素材と構法の建物ですが、構法の一部が建築基準法に触れるため意図的に建築確認申請をしなかったようです。
この件に関しては二つの問題があると思います。
一つ目は、伝統的な構法で「しっかりした素材で丁寧な仕事がなされている」「構法の考え方は理にかなっている」と専門家が話しているように、そういう建物であっても、建築基準法には適合しないということです。
伝統的な建築物は、建築基準法よりもはるかに前から存在します。そういう建物を正当な評価をせずに単純に建築基準法違反になるような法律を作ってきたことは大きな問題だと思います。
今までにも何度も法律の作り方について不満を述べてきましたが、新しい構法はともかく、今まで造られてきた伝統的な構法や地域色の高い構法などについても充分調査研究した上で法律を制定していただきたいと思います。
いつも書くように、世の中に悪者がいなければ法律は必要ありません。
耐震偽造問題のように、巨悪をさばくこともなかなか難しく、反対に善意のものを法律の不備によりさばかなければならないのはどう考えてもおかしいと思います。

二つ目は、法律が不備であることに対するプロの対応の仕方の問題です。
不備な法律とはいえ、時代の要請により改正?されてきた法律に対し、住まいの建設に関してプロである大工さんは逃げることで対応し続けてきたということです。
伝統構法や土壁の耐力などに対し、確認申請時には伝統建築を守ろうとするものが批判する筋かいを書類上は書き込んでおいて、現場ではずしてしまう(施工しない)という逃げのやり方をしてきたということです。
その結果、伝統建築物の性能を理論的に解明することは遅れ、最近やっと「限界耐力設計法」という設計法で説明できるようになってきたところです。

耐震性能についても防火性能についても伝統的建築物が造り始められた時代とは求められる内容が変わってきているのも事実です。
特に耐震性能は、伝統的な建築物の地震に対する応答は最近建てられている建物と違ったものがあります。そのあたりを住まい手に充分説明しないと、伝統的な建物の利点もクレームとなって帰ってきます。

今回の建物においては、あくまで予測ですが、最近の研究成果である耐震や防火の設計法を使えば確認申請を法遵守の形でクリアーできたと思います。
限界耐力設計法などで設計すると、すごく手間がかかり、設計費がかかってしまいます。昔のように、大工さんが方眼紙にフリーハンドで図面をメモし、代願申請屋の設計事務所が申請をおろしてくるというやり方にくらべれば、かなり設計費がかかることになりますが、そもそも他の構造の建物は構造設計費用がかかっています。それを木造のみ本来重要である設計という作業を省いて住まいを建てようとするのはおかしなものです。
そんなやり方をするから、木造建築から住まい手が離れていくわけで、廻りで建てられている木造建築は、木造の良さを活かせていない建物で、ローコストを追求した建物ばかりになってしまっています。

もう一度、法律についても、技術についても、供給のしくみについても、木造住宅建築を見直していかねばならないと思います。



Posted by 三和総合設計 at 07:44│Comments(0)
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