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2006年03月14日

「近くの山の木で家をつくる」をもう一度考える

昨日、「滋賀らしい環境こだわり住宅プロジェクト会議」の会合がありました。

3年間ぐらい、さまざまな形で議論を重ね、やっと一応の形が見えるようなところまできました。
一方、県内各地では「近くの山の木で家を建てる」ことをうたった会がいくつかできつつあります。
「近くの山の木を使う」ということは、地域環境に大切なことで、林業が衰退し、市場が数少なくなり、地場の材木店が製材をやめてしまっている現状を考えると現実的に木を切って家を建てることが大事で、他のNPO活動と違い経済的な事業と密接な関係があります。

そういう中で、活動や運動の形は難しいものがあります。
「地場の工務店を中心として建てられる住まいが、住まい手にとって一般的なものでなくなっているのが現状だ」とある工務店経営者が言っておられましたが、それを打破するには一定の広報活動が必要になってきますが、一般の方々に伝えるためにはメディアの利用、つまり、費用がかかってくるのです。
そういう話を会議の中で話をすると、参加者にその会に参加する意識の違いがあるため、そこまでお金を掛けるのは無理だという意見が出てきて、結局、公共団体の広報誌や新聞記事に取り上げていただける部分に期待するという結論に達してしまいます。

しかし、住まい手の方が望む住まいは「環境に優しい」だけの住まいではありません。
自分が一生懸命働いてためてきた貴重なお金を使って住まいを造るわけですから、「環境」よりも「自分の生活」が先にきて当たり前です。住まい手にも、造り手にも、環境にも優しいのが「近くの山の木を使った住まい」なのですが、一般の方々には「環境」が前面になって伝わり、その活動の思いの中心はつくり手の「こだわり」ということになっており、住まい手にとって良いものという具体的な視点にたった活動が会として欠落しているように思います。
一般の方に自分達のつくる住まいの良さを多少なりと費用をかけてPRすることもできないような活動が世の中に一般化していくのでしょうか。

そういったこともあって、「近くの山の木で家を建てる」ことは、個々の事業者だのみということになってしまいます。
個々の事業者にはさまざまな努力を加えて「近くの山の木で家を建てる」ことを頑張っておられる方もおられるのですが、「近くの山の木で家を建てる」という会の活動がそういった個々の事業者の宣伝活動のためのものになってしまいます。
個々の事業者が会の趣旨にのっとったものであると冠を乗せることにより、「近くの山の木で家を建てる」ことが進み、結果として地域の林業が再生されるということももちろん悪くはないのですが、一般の住まい手の方々に「近くの山の木で家を建てる」ことの意義が充分伝わっていない現状を考えると、環境意識の高い住まい手が「近くの山の木で家を建てる」ことを選択しているだけで、全体としてはそういう住まい手は増えていないように思います。

私たちの活動は、経済活動を伴いながらの環境活動だと思っています。
住まい手の方々にも充分なメリットがありながら環境にも優しい「優れもの」です。
そういった正確な情報を住まい手の方々にうまく伝えながら、なおかつ実態として住まいづくりを進めなければなりません。

会の活動が個々の事業者の事業活動のお手伝いに終わらず、会として、しっかりとした目標をもって進めることが必要ですが、少しいろいろな意味で難しさを感じています。



Posted by 三和総合設計 at 07:28│Comments(1)
この記事へのコメント

なにか、現在の苦悩がつたわってくる文章ですね・・・

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COMMENT:
AUTHOR: 岩波正
DATE: 03/17/2006 06:18:03
とりあえず難しい問題です。
Posted by きけろ at 2006年03月16日 00:42
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