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2007年01月14日

住宅の性能などの考え方について

ブログの内容について、コメントをいただいているのですが、コメント欄では充分に文字数がありませんので、もう一度住宅の性能などの考え方を書いてみたいと思います。

ブログにコメントをいただいた方のご意見では、性能などの考え方に対する建築士としての意見が不正確ではないかということです。
ブログですから、自由な思いを書かせていただいていますが、実は、正確に書こうとしてもはっきり書けないのが住宅の性能ではないかと思っています。

例えば、住宅の耐久性。
どんな建物が長持ちするのかという傾向は言えても、その建物の施工の仕方、建物の建つ土地の条件。建ってからの自然の振る舞い。
こんなことがすべて重なって、結果としてこの住宅は建てられてから何年持っているという事実があるのです。
でも、曖昧な表現ではわからないということで、品確法などでは耐久性の等級を作って何年ぐらいの耐久性がある建物だと表現することになっています。

しかし、その性能表示制度を使って住宅を供給している人々がどれぐらい本当にそのぐらいの耐久性があると考えているのでしょうか。
日ごろそういうことを真剣に考えていない住宅供給者が、何か数字で表していただかないとわからない購入者の橋渡しとして、ひとつの指標を設けているだけで、その数値などが保障されるものではありません。

私は建築士であって、法律や制度を運用する行政マンではありません。
国が決めた基準や実験室で得られた情報などで性能などを判断するものではありません。
住宅の性能などはさまざまな事象が組み合わさって実際の性能として現れてきます。
ですから、いろいろな基準でしか判断できないと物事の本質を見失ってしまうことになります。

建築士としての重要な能力は判断能力だと思います。
法律や制度のみにのっとって答えを出すのではなく、さまざまな事象や内容を総合的に判断する必要があるのです。

物事には確かな法則があります。しかし、その法則はひとつひとつ細かな事象の中で成り立っているもので、他の事象との組み合わせの中ではなかなかうまく説明がつかないものがたくさんあります。
法律や制度はそのあたりをスパッと切ってしまって、わかっている内容だけで物事を決めようとします。
それはそれを運用する人たちが行政マンであって技術者や職人ではないからです。
判断した内容を自分で進めるわけではなく、物事の判断をあまりよくわかっていない人たちが盲目的に信用して運用するから、間違いないことだけを制度化するわけです。

そうすると今までプロの中で通用していた常識は制度外になってしまったりすることもあるのです。

住宅の性能などを正確に判断するためには、今までの経験や知恵、研究機関の実験値なども必要ですし、職人さんたちの考え方なども重要です。

いろいろな書物から得る知識だけではなく、実大実験に立ち会ってみたり、住宅以外の研究に興味を持ってみたり、できるだけ現場に足を運んで実際の施工をみたり、大工さんをはじめとする職人さんたちといろいろ話をしてみたり、そんなことの総合が私の判断基準となっています。

そういう判断ですから、「○○だと思います」としか表現できませんが、その「思います」という表現には、自分の建築士としての日ごろの努力をこめています。

私が書いているブログは、私の思いを表現する手段です。
このブログを見ることで、住宅造りの細かな技術の参考にしていただこうとは思っていません。
設計という仕事は、このようなスペースで書ききれないほどの大変な仕事です。

私が今まで知りえた知識を持って、実際仕事を依頼していただいた方に時間をかけて形にして行っているのが実情です。



Posted by 三和総合設計 at 07:39│Comments(1)
この記事へのコメント

いつも良いブログ書いていただきありがとう御座います。

もうすこし断定した表現も良いよな気がします。

―住宅の性能などの考え方―

ブログの内容について、コメントをいただいているが、コメント欄では充分に文字数がないので、もう一度住宅の性能などの考え方を書いてみたい。

ブログにコメントをいただいた方のご意見では、性能などの考え方に対する建築士としての意見が不正確ではないかということだ。
ブログだから、自由な思いを書かせていただているが、実は、正確に書こうとしてもはっきり書けないのが住宅の性能ではないかと思う。

1. 住宅の耐久性。・・・・
2. 私は建築士であり
3. 運用する人たちが行政マンである
4.「○○だと思う」・・・・の四分割したら意味がはっきり理解できました。
今後もよろしくです。


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COMMENT:
AUTHOR: 岩波正
DATE: 01/16/2007 22:18:59
とりあえず、私が思うには、規格の住宅ならいざしらず、住まい手と向き合って造る住まいの性能は、簡単に数値で表せるものではないということです。

数字で表せない部分に大切なものがあり、その部分は豊富な経験でしか判断できないと思います。
また、それを簡単に言葉で言い表せないことも多いのです。
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COMMENT:
AUTHOR: Q太郎
DATE: 01/20/2007 10:23:28
確かにここはブログでした。住宅関連HPにある掲示板での悩み相談室ではない。ですから自由に書かれるのは、当たり前のことでした。
しかし、これから家を建てる素人が、
ネットで情報を探してみよう→建築士のHPだ→ここで勉強しよう→・・
という順路を辿ったときに
>日本の湿気の多い気候風土において、ベニヤ板と腐りやすいSPF材で造られた2×4住宅が地震に強いといえるのは何年ぐらいまでなのでしょう
という文を読んだ結果
「ベニヤとSPFの家はダメなんだ」と、間違いなく思いこんでしまうでしょう。
それはまるで「いい家が欲しい」を読んだ素人が「外断熱でないとダメなんだ」という概念を植え付けられてしまうのと同じです。よく勉強すれば「充填断熱でもOKなのだ」と気づくのに、です。
(続)

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COMMENT:
AUTHOR: Q太郎
DATE: 01/20/2007 10:25:02
実際の家造りの際に、行政が決めた規格だけでは無理なことは承知しています。規格だけでいい家が建つなら、プレハブで十分です。私は実際の家造りのノウハウや経験則を示してください、と言っているのではないのです。

素人にとってネットは貴重な情報の宝庫です。
「いい家が欲しい」が他者(ライバル?)からのデータや資料提示によって喝破され、ソーラーサーキットだけが「いい家」ではないと認識されてきたように、プロの方が別の工法を批判されるときはその根拠を示して「ダメだ」と書かれるべきだと思ったのです。
Posted by 菅野 at 2007年01月16日 06:26
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