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2007年04月10日

物事の表と裏

雑誌チルチンビトを読んで興味深い記事を見つけました。

木造住宅の設計をされている吉田桂二氏の記事です。
タイトルは木ごころの話でサブタイトルが「善と悪の二面性から、物事の本質を知れ」というものです。

中身は、世の中が何事に対しても神経質になりすぎている。物事には二面性があってどちらか片方の部分を神経質に追いすぎるのは良くないということだと思います。

この記事を読んで全くその通り!と思いました。

また、この二面性を上手に扱っているのがお金儲けをしようとしている企業たちですね。
違った言い方をするとトレードオフの関係。昔の言い方をすると、「あちらを立てればこちらが立たず」ということでしょうか。

食品でも長持ちをさせようとして食品添加物を使ったり、きれいな野菜を作るために農薬をたくさん使ったり。そんなことは食品の世界では割と理解されていますが、住まいにおいてはあまり理解されていないように思います。

能登半島で地震が起こり、たくさんの木造住宅が壊れたという報道があった。
その裏を考えてみると、本当にたくさん壊れたのだろうか。
一つも壊れないのが良いことだから、それから比べるとかなり多くといえると思いますが、実際の比率にすると、そんな多くはないと思いますが、報道からは「多くの」という言葉が付け加えられます。
逆の見方をすると、あんなに大きな地震が来たのにほとんどの住宅が倒壊していませんというのが正しいのでしょうけれど。

また、古い木造住宅が壊れているようですが、それを見て、いつものように木造住宅が壊れましたといった報道がされたようです。さすがにこれは抗議の電話が鳴り止まなかったらしいですが、逆に見ると能登半島に古いプレハブ住宅はあったのでしょうか。

また、木造住宅の良いところ。「善」の部分は何より耐久性が高いことです。
壊れた建物が建設後何年ぐらいたっているのでしょうね。
プレハブ住宅がそれほど長い間使えるほどの耐久性を持っているとは思えません。
ですから、耐久性を考えると木造住宅の優位性がはっきりするのですが、問題が起こったときだけを見て判断するものですから、目が曇っている状態です。

このように物を一面から見ると判断を誤ってしまいます。
逆にいうと、自分たちの商品を売ろうとすると、判断を誤らせる状況を作ればよいということになります。
テレビコマーシャルをがんがんやって、豪勢な展示場を作って目を曇らせながら商品を売りつける。これが最近の住まいの売り方です。

もちろん、これはハウスメーカーだけでなく、伝統的な木造住宅を建てている方にも当てはまることもあります。
自分たち造り手側の意識で善悪を判断し、ハウスメーカーなどが信頼されている部分に目を向けようとしないことも多々あります。

結局、物の良し悪しを判断するためには、表と裏の両方を判断する能力とそれをバランスよく求めることが大事なのだと思います。

設計事務所のやるべき仕事の大きな部分がそこなのではないかと思っています。
普通では考えられない発想やデザインもいいかもしれませんが、ごく普通の住まいづくりに対して、しっかりした知識と経験を提供する必要があると考えています。



Posted by 三和総合設計 at 12:38│Comments(0)
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