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2007年09月01日

9月1日は防災の日

皆さんもご存知だと思いますが、今日は防災の日です。

1923年9月1日の関東大震災に因んで制定されたそうです。

防災の中でも、建築物の耐震は非常に重要なアイテムです。
私なりに住宅の防災について書いてみたいと思います。

まず、古い住宅の耐震性について。
いつも大きな地震があると、「古い木造住宅が倒壊しました」という報道がなされます。

これは決して間違いではありませんが、正確に報道したり、判断したりしないと間違って伝わってしまいます。
「古い木造住宅が倒壊した」ということですが、すべての古い木造住宅が倒壊しているわけではありません。
構造体に腐りがあったり、シロアリにやられているもの、メンテナンスが悪いものがほとんどで、なおかつ店舗などに利用するため耐震的な壁などが撤去されているなど、構造的に無理のあるものがほとんどです。

古い木造住宅ということですが、古いプレハブ住宅や古いツーバイフォー住宅は無いのです。
それほど長持ちしないということです。また、歴史的にも長くないこともありますが、30年、50年と長持ちしているプレハブ住宅やツーバイフォー住宅はありません。
ですから、大きな地震が来る前に耐久性に問題があり、先に撤去されているだけなのです。

ここで考えなければならないのは、充分なメンテナンスがされていない住宅はどんな構造であっても危ないということで、唯一木造住宅だけが耐震性を失うような状況になってもまだ使えてしまうということです。

これを問題と考えるかどうかですが、数百年に一回しかこない地震を恐れてまだ使える住まいを壊してしまうのは問題です。
ですから、耐久性の高い建物に手を入れて、耐震性を高め利用していくというのが正しい姿でしょう。

耐震改修については国や地方公共団体が重要性を訴えていますが、ほとんど進んでいません。
それは制度自体に問題があるからです。

耐震改修するために、既存の建物を耐震診断します。
その耐震診断法に根本的な問題があるのです。
日本全国に数多くある木造住宅は、柱、梁を組み合わせ、土壁で耐震性を保つ伝統的な建て方の住宅です。
そういった建物を、最近の筋違を使った建物を判定する基準で持って判定するしか基準がないのです。
ですからほとんどの建物は「NG」ということになります。

しかし、判定している建築士も、そこに住んでいる住まい手の方も、「これが本当に壊れるの」ということになります。
おなじ「NG」でも判定基準そのものが合っていないわけですから、評点も非常に低く出ます。
そうすると、壊して建て直すしかないということになるのですが、まだまだ使えるし、どう見ても壊れそうな感じでもないのにどうしようもないと考え、まったく手がつけられないのです。

昔の伝統的な住宅がまったく問題が無いわけではありません。
激震地の中で、同じような構造の建物でありながら、壊れる建物と大丈夫な建物に分かれるのです。
いろいろな要素も絡みますが、ほんの少し手を加えるだけでまったく違った答えが出てくるのです。
ですから、国が決めた耐震基準など当てにせず、木造住宅の特質を良く見極め、少しでも耐震補強を行なうことが重要といえます。

今の耐震基準の問題点を県の担当者に言うと、まったくその通りだと言います。
しかし、基準がこれしかないから仕方がないと言います。
これが公務員であり、法律や制度で固められた中味の問題点です。

古くて立派な住まいの耐震性は少しでも手を入れることにより、大きな違いを見せます。

それでは、その他の建物はどうなのでしょうか。

一番問題になるのは、昭和40年代ぐらいに建てられた住宅だと思います。
もちろんこの時代でもしっかりした建物は建てられていますが、根本的に問題があるものも多くあります。
高度経済成長により、持ち家が進んだのですが、住まいを商売と考える業者も増え、それに引きずられるように地場の大工さんもあまり良い仕事といえないような建物を作っているようです。

それらの建物は、一見してガタが来ているとわかります。
建物に手を入れてさらに20年というような考え方が出来ない建物がほとんどです。
どんな建物でも最初につくるときにしっかりした考え方で造っておかないと、後で補強や改修は出来ないのです。

そう考えると、最近の外材集成材を使った建物などは問題があることがわかります。
同じ木造住宅であっても、ツーバイフォー住宅やプレハブ住宅と同じく「使い捨て住宅」であるといえます。

もうひとつ問題なものは、伝統工法でありながら、柱などのサイズが小さい住宅です。
昔の工法を模倣しながらも、出来るだけ安く作るため材料を絞っていく。
桧の4寸角と威張ったりする人もありますが、伝統工法の場合、壁が少ない分柱に大きな負担がきます。それを考えると重要な柱は4寸では不足です。
特に断面欠損する通し柱は6寸、8寸と大きなサイズが必要となります。

昔の民家は十分な情報もないのに耐震的な考えが盛り込まれているのに驚かされますが、それを模倣した「えせ伝統工法」には問題が残ります。
他の構造の住宅より耐久性が高い分、より耐震補強の必要性があると考えなければなりません。


いずれにしても住まいの耐震性というのは難しい問題です。

住まいを商品と考え、金儲けの手段に考えている人たちに耐震改修などを任せるととんでもないことになります。
「新築そっくりさん」や「ビフォアーアンドアフター」などという言葉を聞くと怒りを感じます。

防災のことを考えながら動き、被災してしまうというようなことにならないようにしなければなりません。

私たちも日々勉強し、皆さんのお役に立ちたいと思っています。 



Posted by 三和総合設計 at 08:18│Comments(0)
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