2009年10月29日

お偉い方々の言い訳

皆さんもご存知のように、海上自衛隊の護衛艦と韓国籍のコンテナ船が衝突しました。お偉い方々の言い訳

原因はいろいろあるのでしょうけれど、海上保安部の管制官の誘導が大きな原因のようです。
それに対して、記者会見では管制官の誘導は「情報提供」であって、「指示ではない」と言い訳しているようです。

危険な箇所を交通管制する管制官の誘導が「情報提供」ですなんてよく言えたものです。
工事現場の誘導員の言うとおり運転したら事故を起こした。誘導員は警察官ではないので、事故を起こした当事者の責任だとよく言われます。それと同じだと言うのでしょうか。

もし、そうだとしても、会場での操舵はそれぞれの責任で行っていただかなければいけませんが、私達の出した「情報」は誤っていましたと素直にいえないのでしょう。


もう一つ、私達の仕事に関係することです。

兵庫県三木市にあるEディフェンスと言う施設で、木造3階建の耐震実験が行われました。
実験は同じ間取りの2棟を造り、建物の最下部土台と基礎を緊結する金物を制度どおりつけるタイプと、少し少なくついているタイプ(昔の基準)を同時に揺らし、以前の基準のものだけが倒壊するというストーリーの実験だったのです。

結果はというと、金物の少ない建物は倒壊しないで、足元をしっかり留めた建物が倒壊しました。
まったく想定とは逆の結果になりました。

私達実務者は、大きな地震に対しては、足元をがっちり留めるより、フリーにしたほうが良いと主張してきましたが、研究者の方々は効果があるかも知れないが、どういう挙動になるかわからないので危険であると言われ続けてきました。

でも、この実験では足元の金物が破断し、上部の建物に大きな地震力が伝わらなかったようで、しっかり留めた建物だけが倒壊することになりました。実務者の考えが正しいことが証明されたのです。

そのときの研究者の方の言い訳。
足元がちぎれて、免震的な効果があったのかもしれない。・・・ 私達の主張どおりじゃないですか。
もう一つ、大きな力を加えすぎたのかもしれない。・・・ 自分達の思惑で実験をして、その通りいかなかったら、こんな主張をする。とんでもない。地震はどんな大きさでやってくるかわかりません。
基準どおりの中でいくら答えを出しても、自然の力はそれ以上になって襲ってくることは今までの経験で解っているはずです。

あまりに官僚的な答えですね。

優秀な実務者は、法律や基準だけで設計や施工をしている訳ではありません。
建築基準法は最低基準です。
それを超えたときにどうなるのか。それも頭に置きながら物を考えています。
少しぐらい問題があっても、いろいろなことを考えるとこちらのほうが良い。こんな風に物を考えるのですが、官僚や研究者の方は、物事を個別に考えることが多く、基準や制度でしか物を考えないようになっています。

挙句の果てに、問題が起こると訳のわからない言い訳をします。
素人の人を煙に巻くことは出来ても、プロには通用しません。

最後に映像を見てください。

http://video.fc2.com/content/09.10.27%20E-%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%82%B9%E5%85%AC%E9%96%8B%E5%AE%9F%E9%A8%93/20091028cub1DWTK/

倒壊した建物のほうが、国が基準化した長期優良住宅で、倒壊しなかった建物が、足元の金物が不十分とされた建物です。
いかがですか。国の基準や制度なんて、一定の力を超えるともろいものです。
大工を初めとする実務者の意見、足元を固定しないほうが大きな地震には効果がある。
これが証明された(実験者の意図とは違うが)歴史的な実験となりました。

最後に言っておきますが、私は木造でこんな醜い3階建を建てることは全体反対しています。


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こういうニュースがありまして。
「長期優良」の3階建て木造住宅、震度6強で倒壊 防災研が実験
「 防災科学技術研究所などは27日、大型震動台「E―ディフェンス」を使って3階建...
「長期優良住宅」の基準に対するらいよん先生の怒り【こすいのほとり】at 2009年11月01日 22:45
この記事へのコメント
怖い映像です
制度どうりの金具固定が真逆の結果になった。
机上での計算された理論はもちろん大切ですが、長い経験則に基づいた工法が実際の状況に即応しているんですね。
Posted by くりちゃん at 2009年10月30日 09:02
これは非常に難しい問題なのです。
一定の大きさの地震までは、金物を留めたほうが強い。
でも、それを超える地震が来ると留めない方が強い。
どちらを重要視するかと言うことですね。
そのあたりを良くわかった実務者はかなり少ないです。
研究者は自分の意見が正しいことを証明しようとして墓穴を掘る。
結局、よく勉強し、誠実に仕事をするしかないのではないかと思っています。
Posted by 三和総合設計 at 2009年10月30日 11:46
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