2011年02月24日

情報を正しく受け止める

ニュージーランドで大きな地震被害が発生しました。情報を正しく受け止める

昨日遅く自宅に帰ると、家族がテレビでニュージーランドの地震のニュースを見ていました。
話を聞くとマグニチュードは6.3ぐらい。
一言、「そんな大きな地震じゃないな」と言ってしまいました。

マグニチュードは地震のエネルギーの大きさを表すもので、地震のエネルギーの対数と線形関係にあり、マグニチュードが2増えるとエネルギーは1000倍になる(出典:ウィキペディア)そうです。
今までの日本の地震や世界各地の地震の情報から考えると、6.3は大きな地震ではあるけれど6の後半にならないと大きな被害はでないと瞬時に思ってしまいました。

地震の被害は地震のエネルギーのほかに、震源からの近さに関係があります。
また、地盤の状況によっても違います。

そういった情報が正確に入ってくると、この地震による震度は日本の基準に当てはめると7に相当しそうな感じです。

今まで挙げた内容は、地球そのものに関係することですが、地震の被害が起こるかどうかは建物の中身に大きな影響を受けます。

今回の地震では、歴史的な建物の礎石造が弱かったとか、エレベーターシャフト部分だけ残った建物を見て、偏心している建物はダメであるとか言われています。

言われている内容にうそはありませんが、ニュースは冷静に見る必要があります。
語学留学生が閉じ込められているだろうと言われている建物の映像をみて、現地はほとんどそんな状況だと思われたのではないでしょうか。
もちろん、危ない建物、壊れた建物もたくさんありますが、無傷だとは言いませんが、人の命を充分守った建物のほうが多いことをちゃんと見なければなりません。

偏心している建物でも、倒壊しなかったものもたくさんあるでしょうし、建物が倒壊するかどうかはいろいろな条件の組み合わせです。

こういう建物がまずいという話を突きつめていくと、こんな建物しかできないのか。
究極には建物はダンボールが一番なんて事になってしまいます。

テレビでは、建物の固有周期と被害が関係があると言っていました。
これは正しい。
さらに、建物の高さによって建物の固有周期が違うとも言っていました。
こちらはほぼ正しいが、中途半端に理解すると大きく間違ってしまいます。
高さが同じでも、コンクリートの建物と木造の建物では全く違います。
また、同じ木造でも最近建てられている建物と伝統的な木造住宅では固有周期もかなり違いがあります。
伝統構法の中でも、数奇屋づくりなどと田舎の民家、土蔵などではそれぞれ違います。

このように、ほぼ当たっているという話を聞いて自分なりに当てはめてもあまり意味がないということです。

阪神大震災の後、瓦屋根がダメだとか木造住宅がダメだとか、いい加減な情報がたくさん流れました。
今もこの情報に惑わされている人は多いと思います。
多くの情報は住宅メーカーなどが自分達の商品を売り込むために誇張したものです。

私はこの地震で被害を受けた人をどうすることもできませんが、間違った情報でいい加減な家を作らないことには協力することができます。

日本でもこれから大きな地震が起きるでしょう。
それに対して被害を少なくするためには、ちゃんとした設計者を育てることが重要です。
法律では建物は守ってくれません。
住宅産業の中で多く作られている住まいは、建築士どころか技術的な知識の薄い営業マンがプランを作っています。

そういったやり方を直さない限り、法律は守られているけれど被害はあるという状況になると思います。
もちろん、法律を強化したりすることは、建物全体の被害を減らすことにつながります。

でも、あなた自身が住むその家そのものを考えてくれているのではないということを考えなければなりません。
自分の持っている予算で、自分の手に入れた土地に自分の望む条件で家を建てる。
そんな中で地震の対策を考えないと意味がないのです。
自分の家をどれぐらい持たせるのか。
何世代も持つ家なのか。それとも30年程度でよいのか。選挙事務所のように仮設のもので良いのか。
それを考えなければなりません。

皆さんもそんなことを考えながらテレビを見てください。
物事は理屈どおりにいかないということです。
地震に強い建物を考えて作っても、建物の一部が壊れたら設計の理念どおりにいかないこともあります。
余力のある建物かどうかが問題になります。

計算により究極に予算を絞った建物になると余力が少ないことが多いです。
そんな建物に想定以上の力が掛かると一瞬にして倒壊という状況になります。

ご覧になった方もあると思いますが、日本の長期優良住宅(基準法の1.25倍の構造耐力を持つ)で作った木造3階建ての実大実験棟が倒壊しました。
基準は大筋間違いないが、個別となると条件により異なってくるし、壊れ方も全く違うということです。
その実験で同時に揺らした基準を守っていない建物は倒壊しませんでした。(学者さんの意見ではどちらも倒壊と言うことですが)

さあ、どうすれば良いのか。
ちゃんとした知識を持った設計士に頼むのが一番ですが、そんな設計士はほとんどいないと考えて良いでしょう。
では研究者のような人に相談したら良いでしょうか。
でも研究者の方々は基本的に建物の実際を知らない。

いろいろな人が協力し合って建物の計画を進めるのが一番ですが、やはり正確な知識をもった設計士を育て入るのが一番だと思います。

そのためには何でもかんでも法律さえ守っていればそれで良いという考えかたをやめることです。
いろいろ考えて設計すると良い建物になるけれど、お金が少しかかってしまう。
法律のぎりぎりで建てれば、予算は少なくてすむ。そうするとお金がかかるようなことをいう設計士に仕事を頼まないということになってしまいます。

人を育てるということ。
それは、物事をちゃんと見るということが必要です。
物事をお金だけで判断している限り、ちゃんとしたものは育たない。

でも、将来大きな損失をこうむるかもしれませんが、確率は低いかもしれない。

どう考えたら良いか解りませんね。

テレビでも話されていますが、これから建物の耐震性についていろいろと言われるようになるでしょう。
でも、今ある画一的な耐震判定基準では日本の大切な文化は守れないことだけは理解して欲しいと思います。

阪神大震災の2倍以上の加速度の地震。
そんな地震には日本の伝統的な建物が採用してきた石場建てという構法が良い効果があると思いますが、今の耐震基準ではそんなことは考慮されない。
そりゃそうです。
日本の建築基準法や耐震判定基準は阪神大震災や今回のような地震は対象外、判定外なのです。
皆さんご存知でしたか。


書きだしたらきりがありません。
このあたりで終わりにしますが、くれぐれもいい加減な情報に惑わされないようにしてくださいね。。。


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