2015年01月23日
伝統って?
「伝統」ってなんだろうと考えることありませんか。
最近、国宝、重要文化財、県や市の建造物の文化財の耐震診断にかかわることがたびたびあります。
診断をしてみると、少し耐震性が足りないという結果が多いのですが、一般住宅と違い、それがすぐに問題になるほどのことではないと思います。
しかし、耐震性が不足ということになれば、必ず補強計画を立てるということになります。
補強する建物が文化財ですから、補強方法も何でも良いというわけにはいきません。
特に重要文化財級になると、できればひとつも触りたくないという話が出てきますが、そんな夢のような話は無理です。
そういう時にどういう話になるかというと、見えないところで補強する。文化財の部材に傷つけないような形で補修する。
それでも難しいときは、鉄骨などで耐震性を確保し、それに寄りかかるような形で耐震性を確保するという感じです。
こんなことを話していると本当にそれで良いのだろうかと思うことがあります。
できるだけ見えないところで補強するということは良いと思いますが、文化財の部材にほぞなどの仕口を新たに作ったりしないために、本来の構造とは別の形の構造で補強するという方法は何か違うような気がします。
ご存知の形も多いと思いますが、昔の建物は木と木の組み合わせで持たせてあります。
土壁なども長い歴史のなかで見れば新しい耐震要素です。
ですから、伝統を守るような形で補強しようとすると、木と木の組み合わせを増やすしか方法がないのです。
まあ、補強しようとしている建物が、重要文化財などとなると、昔の形を標本のような形で残すことに意味があるので、鉄骨などの補強も仕方がないのかも知れません。
先日、ヘリテージマネージャーの講習会で昔の建物の話を聞きました。
平等院の建物は平安時代に建てられた建物ですが、鎌倉時代に足元に貫を入れるような形で補強されているそうです。
その形を両方平行して文化財として残しているのですから、現代であっても、その建物の特質を失わない形で補強することは問題ないのではないかと思ったりします。
結局、何が違うのか。
平等院は平安時代も鎌倉時代も使われていたということ。
でも、最近の平等院は使われているのだけれど、保存されているのだということなのではないでしょうか。
建築物を語るとき、伝統構法という言葉がよく出てきます。
何が伝統構法なのか、昔の形をそのまま残していくのが伝統構法なのかというとそれは違うと思います。
先ほども書いたように、昔の建物を博物館的に残すのならそのままということになりますが、本当の伝統というものは生活と結びついたものだと思います。
ですから、現在の生活に必要な機能が組み込まれていかなければ意味がないと思います。
しかし、なぜ伝統構法と現代工法が対比して語られるのか。
それは現代工法の住宅がお金儲けの商品となってしまっているからです。
伝統構法は日本人の持つ知恵、材料をできる限り活用して作られてきました。
しかし、現代の住まいは、ハウスメーカーなどの進出によりお金が儲かればよいという工法に成り下がったといってもよいような気がします。
今回は現代工法の問題については書きませんが、伝統構法も変わるべきところは変わらなければならないと思っています。
最近、伝統構法の建物の温熱環境について話題が出てきています。
これは2020年に建築基準法が改正され、現在存在する伝統構法の建物がそのままの形で建てられなくなるためです。
伝統構法で建てられる建物の数が少ないから関係ないというわけにはいきません。
世の中、住まい手のためを考えたというより、お金儲けを優先した建物が多くなってきた状況を考えると、何とか伝統構法を守れるような形を作らなければなりません。
逆に、伝統構法のほうも、法律が目的とするところを充分理解し、変わらなければならないと思います。
そうでないと、先ほど書いたような保存を目的とした建物となってしまいます。
私は「伝統」というものはその時代の生活の知恵を組み入れていかなければならないし、材料も自然素材でなければいけないということでもないと思います。
その時代の技術を入れ込んだ形の住まい。
それが次の世代で伝統構法と評価される建物になるのだと思います。
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三和総合設計は、Forward to 1985運動に賛同しています。

最近、国宝、重要文化財、県や市の建造物の文化財の耐震診断にかかわることがたびたびあります。
診断をしてみると、少し耐震性が足りないという結果が多いのですが、一般住宅と違い、それがすぐに問題になるほどのことではないと思います。
しかし、耐震性が不足ということになれば、必ず補強計画を立てるということになります。
補強する建物が文化財ですから、補強方法も何でも良いというわけにはいきません。
特に重要文化財級になると、できればひとつも触りたくないという話が出てきますが、そんな夢のような話は無理です。
そういう時にどういう話になるかというと、見えないところで補強する。文化財の部材に傷つけないような形で補修する。
それでも難しいときは、鉄骨などで耐震性を確保し、それに寄りかかるような形で耐震性を確保するという感じです。
こんなことを話していると本当にそれで良いのだろうかと思うことがあります。
できるだけ見えないところで補強するということは良いと思いますが、文化財の部材にほぞなどの仕口を新たに作ったりしないために、本来の構造とは別の形の構造で補強するという方法は何か違うような気がします。
ご存知の形も多いと思いますが、昔の建物は木と木の組み合わせで持たせてあります。
土壁なども長い歴史のなかで見れば新しい耐震要素です。
ですから、伝統を守るような形で補強しようとすると、木と木の組み合わせを増やすしか方法がないのです。
まあ、補強しようとしている建物が、重要文化財などとなると、昔の形を標本のような形で残すことに意味があるので、鉄骨などの補強も仕方がないのかも知れません。
先日、ヘリテージマネージャーの講習会で昔の建物の話を聞きました。
平等院の建物は平安時代に建てられた建物ですが、鎌倉時代に足元に貫を入れるような形で補強されているそうです。
その形を両方平行して文化財として残しているのですから、現代であっても、その建物の特質を失わない形で補強することは問題ないのではないかと思ったりします。
結局、何が違うのか。
平等院は平安時代も鎌倉時代も使われていたということ。
でも、最近の平等院は使われているのだけれど、保存されているのだということなのではないでしょうか。
建築物を語るとき、伝統構法という言葉がよく出てきます。
何が伝統構法なのか、昔の形をそのまま残していくのが伝統構法なのかというとそれは違うと思います。
先ほども書いたように、昔の建物を博物館的に残すのならそのままということになりますが、本当の伝統というものは生活と結びついたものだと思います。
ですから、現在の生活に必要な機能が組み込まれていかなければ意味がないと思います。
しかし、なぜ伝統構法と現代工法が対比して語られるのか。
それは現代工法の住宅がお金儲けの商品となってしまっているからです。
伝統構法は日本人の持つ知恵、材料をできる限り活用して作られてきました。
しかし、現代の住まいは、ハウスメーカーなどの進出によりお金が儲かればよいという工法に成り下がったといってもよいような気がします。
今回は現代工法の問題については書きませんが、伝統構法も変わるべきところは変わらなければならないと思っています。
最近、伝統構法の建物の温熱環境について話題が出てきています。
これは2020年に建築基準法が改正され、現在存在する伝統構法の建物がそのままの形で建てられなくなるためです。
伝統構法で建てられる建物の数が少ないから関係ないというわけにはいきません。
世の中、住まい手のためを考えたというより、お金儲けを優先した建物が多くなってきた状況を考えると、何とか伝統構法を守れるような形を作らなければなりません。
逆に、伝統構法のほうも、法律が目的とするところを充分理解し、変わらなければならないと思います。
そうでないと、先ほど書いたような保存を目的とした建物となってしまいます。
私は「伝統」というものはその時代の生活の知恵を組み入れていかなければならないし、材料も自然素材でなければいけないということでもないと思います。
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それが次の世代で伝統構法と評価される建物になるのだと思います。
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Posted by 三和総合設計 at 08:32│Comments(0)
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