2009年05月11日
正しくものをこわがる?
昨日、一昨日と建物の完成見学会を開催させていただきました。
引渡し前の建物をお貸しいただいたお施主さん。お越しいただいた皆様、ありがとうございました。
日本でも新型インフルエンザの感染者が出ていますね。
これ以上広がらなければ良いのですが。
インフルエンザの関係のテレビ報道で、話されていた言葉があります。
寺田寅彦氏の随筆に出てくる言葉だそうですが、「ものをこわがらなさ過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむずかしい」ということです。
新型インフルエンザをあまりに怖がりすぎるのも問題だけど、怖がらなさすぎるのも問題だということです。
ちゃんと物事を理解し、行動しましょうということですね。
この言葉はすばらしいと思いました。
今の世の中、これができていないため、さまざまな問題があるように思います。
私達の仕事の世界でも、こんなことはたくさんあります。
例えば大地震の問題。
阪神大震災以来、ハウスメーカーを中心に木造住宅は地震に弱いなどといった間違った宣伝がなされたりしました。
どうしても商売が絡むと、起こったことを正しく伝えることなく、自分達の都合の良いように使ったりします。
その結果、地震を怖がりすぎる人々が増え、地震に強い住まいを求めるため、宣伝に乗せられ、日本の気候風土においては耐久性の低い、つまり、長持ちしない住まいが多く選択されるようになっています。
最近ではそんなに大きな声ではなくなりましたが、合板を使ったツーバイフォー建物は地震に強いとか、在来工法の建物にベニヤの耐力壁を使ったり、完成してまもなくは確かに地震に強いかもしれないが、湿気の多い日本の気候風土においては、長い将来もその耐震性が続くかどうかといった問題が正しく語られていないこともあります。
逆に、長持ちする建物の代表は伝統構法など昔から日本に建てられている建て方でしょう。
でも、正直言って、昔の建物は地震のことを現代の建物のように考えつくしていたかというと疑問があります。
(ここで間違うといけないのであえて書きますが、伝統構法の建物が地震に弱いといっているわけではありません。
地震のことを第一に考えて造っているということではないので、地震にちゃんと耐えてくれる建物もあれば、そうでないものもあると考えたほうが良いということです)
それなのに、町屋や民家というだけで、その安全性をちゃんと確かめずに、これは良いものだと判断する人も多いということです。
こわがらなさ過ぎるということですね。
最近では町屋のムードが好きな人が多く、その人たちを目当てにした商売もあります。
同じものを売るにしても、そういったところで売ると売り上げが上がる。
でも、そこで商売をする人は、買い物に来た人の安全を守る義務があると思うのです。
町屋はある程度建物が連続していることで耐震性を確保している場合もあります。
最近のように両側の建物がどんどん建て替えられているような場合、耐震性が弱まっている場合もあります。
まして、商売するために、もともとあった柱や壁を撤去したりすることはもってのほかですね。
伝統的な建物の耐震性について怖がりすぎて貴重な文化遺産を壊してしまうのも問題ですし、耐震性を無視して古けりゃいいんだというような思いも問題があります。
正しく怖がる。つまり、その耐震性を正しく理解し、補強すべきところは補強する。でも、その良さを壊すような補強方法は問題ですし、その建物の構造特性を無視した補強方法も意味がありません。
こう考えると、寺田寅彦氏の言われる「正しく怖がるということは非常に難しい」という言葉に重みを感じますね。
昨日の見学会にこられた方がシロアリの心配をされていました。
シロアリも同じですね。
地域地域によってシロアリの特性も違う。
ヤマトシロアリとイエシロアリでは恐ろしさもまったく違う。
最近ではアメリカカンザイシロアリというのも少し心配しなければならない。
そういった知識をしっかり持って対策を考えないと粗悪なシロアリ業者の餌食になったり、シロアリの薬によって体を悪くしたり、無駄なお金を使ってしまったり、いろいろなことが考えられます。
残念なことですが、大きなハウスメーカーも含めて、住宅業界はあまり質の良い人たちの集まりとはいえないのが現状だと思います。
人々を怖がらせて商売したり、怖がらない人を集めて商売をしたり、そんなことが日常だと思ったほうが良いと思います。
正しく怖がるためには、物事を正しく理解することに力を入れる、時間を割くことが重要です。
設計事務所だといっても、デザインだけしか考えない事務所も実は多いのです。
こんなことを書くと不安にしか感じられないかもしれませんが、正しく怖がる第一歩は、こわがらなさ過ぎるよりも、こわがり過ぎるところからスタートするほうが正解だと思います。
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引渡し前の建物をお貸しいただいたお施主さん。お越しいただいた皆様、ありがとうございました。
日本でも新型インフルエンザの感染者が出ていますね。
これ以上広がらなければ良いのですが。
インフルエンザの関係のテレビ報道で、話されていた言葉があります。
寺田寅彦氏の随筆に出てくる言葉だそうですが、「ものをこわがらなさ過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむずかしい」ということです。
新型インフルエンザをあまりに怖がりすぎるのも問題だけど、怖がらなさすぎるのも問題だということです。
ちゃんと物事を理解し、行動しましょうということですね。
この言葉はすばらしいと思いました。
今の世の中、これができていないため、さまざまな問題があるように思います。
私達の仕事の世界でも、こんなことはたくさんあります。
例えば大地震の問題。
阪神大震災以来、ハウスメーカーを中心に木造住宅は地震に弱いなどといった間違った宣伝がなされたりしました。
どうしても商売が絡むと、起こったことを正しく伝えることなく、自分達の都合の良いように使ったりします。
その結果、地震を怖がりすぎる人々が増え、地震に強い住まいを求めるため、宣伝に乗せられ、日本の気候風土においては耐久性の低い、つまり、長持ちしない住まいが多く選択されるようになっています。
最近ではそんなに大きな声ではなくなりましたが、合板を使ったツーバイフォー建物は地震に強いとか、在来工法の建物にベニヤの耐力壁を使ったり、完成してまもなくは確かに地震に強いかもしれないが、湿気の多い日本の気候風土においては、長い将来もその耐震性が続くかどうかといった問題が正しく語られていないこともあります。
逆に、長持ちする建物の代表は伝統構法など昔から日本に建てられている建て方でしょう。
でも、正直言って、昔の建物は地震のことを現代の建物のように考えつくしていたかというと疑問があります。
(ここで間違うといけないのであえて書きますが、伝統構法の建物が地震に弱いといっているわけではありません。
地震のことを第一に考えて造っているということではないので、地震にちゃんと耐えてくれる建物もあれば、そうでないものもあると考えたほうが良いということです)
それなのに、町屋や民家というだけで、その安全性をちゃんと確かめずに、これは良いものだと判断する人も多いということです。
こわがらなさ過ぎるということですね。
最近では町屋のムードが好きな人が多く、その人たちを目当てにした商売もあります。
同じものを売るにしても、そういったところで売ると売り上げが上がる。
でも、そこで商売をする人は、買い物に来た人の安全を守る義務があると思うのです。
町屋はある程度建物が連続していることで耐震性を確保している場合もあります。
最近のように両側の建物がどんどん建て替えられているような場合、耐震性が弱まっている場合もあります。
まして、商売するために、もともとあった柱や壁を撤去したりすることはもってのほかですね。
伝統的な建物の耐震性について怖がりすぎて貴重な文化遺産を壊してしまうのも問題ですし、耐震性を無視して古けりゃいいんだというような思いも問題があります。
正しく怖がる。つまり、その耐震性を正しく理解し、補強すべきところは補強する。でも、その良さを壊すような補強方法は問題ですし、その建物の構造特性を無視した補強方法も意味がありません。
こう考えると、寺田寅彦氏の言われる「正しく怖がるということは非常に難しい」という言葉に重みを感じますね。
昨日の見学会にこられた方がシロアリの心配をされていました。
シロアリも同じですね。
地域地域によってシロアリの特性も違う。
ヤマトシロアリとイエシロアリでは恐ろしさもまったく違う。
最近ではアメリカカンザイシロアリというのも少し心配しなければならない。
そういった知識をしっかり持って対策を考えないと粗悪なシロアリ業者の餌食になったり、シロアリの薬によって体を悪くしたり、無駄なお金を使ってしまったり、いろいろなことが考えられます。
残念なことですが、大きなハウスメーカーも含めて、住宅業界はあまり質の良い人たちの集まりとはいえないのが現状だと思います。
人々を怖がらせて商売したり、怖がらない人を集めて商売をしたり、そんなことが日常だと思ったほうが良いと思います。
正しく怖がるためには、物事を正しく理解することに力を入れる、時間を割くことが重要です。
設計事務所だといっても、デザインだけしか考えない事務所も実は多いのです。
こんなことを書くと不安にしか感じられないかもしれませんが、正しく怖がる第一歩は、こわがらなさ過ぎるよりも、こわがり過ぎるところからスタートするほうが正解だと思います。
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Posted by 三和総合設計 at 08:09│Comments(2)
│変だぞ!今の住まいづくり(正)
この記事へのコメント
うーん 成る程! 知らないとは怖いことですね。
住にしろ食にしろ命に関わることに関しては
“知らぬが仏”は通用しませんね
実は我が家は某Mホームのパネル住宅ですが
なんだか心配に・・・・・
住にしろ食にしろ命に関わることに関しては
“知らぬが仏”は通用しませんね
実は我が家は某Mホームのパネル住宅ですが
なんだか心配に・・・・・
Posted by くりちゃん at 2009年05月11日 17:46
私達は住まいづくりにおいてはプロです。
住まいづくりについては、ダメなことはダメとはっきり言うことにしています。
医療関係の専門学校で非常勤講師をし、住居学のようなことを教えたときに同じような話をしました。
学生サンの中には、ハウスメーカーの建物を悪いと言わないでといわれたこともありますが、そのときも心を鬼にして真実を伝えるのだと思って話をしました。
ただ、建物の中身が極端に悪いということではありません。
宣伝の仕方がうそっぽいのがダメだということです。
プレハブ建物はプレハブとしての良さがあるわけで、大手の安心感でものを売ろうとしているところが私には許せないのです。
住まいづくりについては、ダメなことはダメとはっきり言うことにしています。
医療関係の専門学校で非常勤講師をし、住居学のようなことを教えたときに同じような話をしました。
学生サンの中には、ハウスメーカーの建物を悪いと言わないでといわれたこともありますが、そのときも心を鬼にして真実を伝えるのだと思って話をしました。
ただ、建物の中身が極端に悪いということではありません。
宣伝の仕方がうそっぽいのがダメだということです。
プレハブ建物はプレハブとしての良さがあるわけで、大手の安心感でものを売ろうとしているところが私には許せないのです。
Posted by 三和総合設計 at 2009年05月11日 21:42